2002/06/18
「職が続くかどうかは更生の大きな要素になる」。暴走族に入った卒業生を送り出してきた広島市内の中学校長は言います。確かに、暴走族を続けていても、仕事に就いている少年には一筋の光を感じました。「早く親方や職場の先輩に近づきたい」といった言葉を聞くと、ホッとした気持ちにもなれました。 一方、職を投げ出すケースも少なくありません。「(同僚や上司に)むかついた」「たいぎかった」。少年たちは辞めた理由を多く語りませんが、雇用状況の厳しい中、あまりに安易です。 暴走への誘惑と仕事との間で揺れるケースが多いようです。「雇い主には、子どもの心をうまくつかんでほしい」。校長はそう願います。 広島市安佐南区で暴走族相談員を務める建設会社社長奥村洋三さん(54)は、立ち直りへの決意を前提に、暴走族少年を雇い入れてきました。 「彼らは夢を持つ力に欠ける」。スポーツや勉強よりも、暴走に引き付けられた少年たちに、奥村さんは厳しく見ています。そして提案します。「どんなに小さくても、一つ目の夢は絶対かなえさせるんです」 例えば、新入社員にこう話しかけます。「スニーカーが欲しい? ひと月頑張りゃあ買えるよ」。手に入ると次は腕時計、旅行、将来は結婚…。夢を少しづつ膨らませてやるそうです。 おのずと仕事は続き、職場での責任も重くなります。「簡単にやめられなくなりますよ」。奥村さんの「作戦」は奏功しているようです。 「府中町奉仕会」という二十歳前後の元暴走族メンバーを中心にしたグループが、広島県の府中町にあります。十年前に結成し、祭り会場やキャンプ場などの清掃ボランティアに努めてきました。 昨年暮れ、町から奉仕会へ「感謝状」が贈られました。かつて暴走に明け暮れた彼らには、思わぬ出来事でした。「町の一員として認められた」。メンバーはうれしそうでした。 世話役の製めん業木田圭司さん(38)は「いつかは彼らがこの街の子を救う側にもなる。力を町づくりに取り込みたい」。役場や周囲の大人は、彼らの「マンパワー」を期待しています。 西区の公民館。お年寄り向けの運動教室で、付き添い役として汗を流す若いスタッフの中に、三人の暴走族経験者がいました。派遣指導をする特定非営利活動(NPO)法人「コーチズ」が今春、雇い入れました。 ウオーキングの手本を見せたり、手を取ってバランス運動の補助をしたり…。「若い力が必要な福祉やスポーツの分野で、目標を見つけてほしい」と児玉宏代表理事(47)。半年の契約。福祉施設など約五十カ所を回り、千人以上のお年寄りと触れ合います。 「感謝されることが彼らの心に与える影響は大きい」。児玉さんは手ごたえを得ています。 社会は、暴走の連鎖に身を投じた過去に厳しい目を向けます。「まじめになるからなんとかしてくれでは虫が良すぎる」。取材班にはそうした声も多く届きました。でも、彼らを社会が拒めば「暴力団の人材供給源」という悪循環に拍車がかかりかねません。 小さくても「夢」は探せます。不況でも彼らの力を生かす道はあるはずです。額に汗する尊さを伝える必要があります。
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