中国新聞
2002/06/20
大人の力 (5)
厳罰を、同時に優しさも

許すな再犯 支援粘り強く

  アリスガーデン近くにバイクで乗り付けた少年(右)に声を掛ける捜査員(広島市中区)  

 「今日から特別体制で君たちと向かい合わなければならなくなった」「族を出よう。われわれが力になろう」。昨年十月、広島県警の暴走族特別取締本部が結成時に発表した「今暴走族に入っている君たちへ」と題したメッセージの一節です。

 ペンを執った県警の竹花豊本部長は「暴走族少年、そして県民への決意表明であると同時に、県警の内部にも発したんです」と振り返ります。暴力団に支配され凶悪化する広島の暴走族。「既存の組織が情勢に対応し切れなくなっている」。その認識から刑事、交通などの部門を超え、二百二十八人の体制で取締本部を組みました。「垣根を越え、取り締まりと離脱・更生支援の両面に全力を」。自覚を現場に促したわけです。

 メッセージから八カ月。「私たちの仕事は容疑者を捕まえるだけではない。その意識も生まれてきた」。取り締まり面以外の手応えを竹花本部長は感じています。

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 冬の日曜日。「広島掃除に学ぶ会」のボランティア活動に参加した暴走族の元メンバーたちを取材しました。広島市内の小学校のトイレ。冷え切ったタイルの床にはだしで立ち、スポンジやタオルを素手に持ち、無心に便器を磨いていました。

 そばで大柄な男性たちが一緒に作業していました。暴走族担当の県警の捜査員です。逮捕後、保釈された元メンバーを活動に連れ出したのです。「これまでは『敵』だった人たちの手を借りて、頑張ります」。メンバーの一人は掃除を終えた後、参加者を前に更生を誓いました。

 「あいつはもう大丈夫」。取り調べをした捜査員は元メンバーの立ち直りを確信していました。

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 「止まれ」「脱帽」。教官の指示に従って、整然と移動する少年たちを東広島市の広島少年院で見ました。収容されている約百三十人のうち六割近くを暴走族少年が占めます。一年近く、厳しい規律の中で規範意識や生活習慣、人間関係を学びます。

 「二度と会うことのないように」。教官たちはそう言って少年を送り出します。しかし全国的な比率でみると、20〜25%が保護観察中に罪を重ねるといいます。

 週末の中区の公園。保護観察中だったり、審判を待つ身でありながら、タオルで顔を覆い、特攻服姿で現れる少年もいます。「顔を見られるとやばい」。周囲の願いと裏腹な現実もあります。

 そんな少年たちの輪に私服の警察官が近づきます。「早(はよ)う帰れ」と促し、ヘルメットなしでバイクを運転するなどのルール違反を厳しくしかりつけます。素直に従う少年はほとんどいません。取材班に「ポリ(警察)の仲間?」とつっかかる少年も少なくありません。

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 「まあ、裏切られることも多いけどね」。ベテランの捜査員は更生の難しさを痛感しながら強調します。「捕まえて初めて、少年の家族背景や悩みが分かるんよ」

 別の捜査員の携帯電話にこの春、かつて取り調べた少年から大学合格の知らせが入ってきました。電話を持って「そりゃえかった」を繰り返す捜査員はうれしそうでした。

 「ルール違反には徹底取り締まり、厳罰を」。多くの読者の声でもあります。同時に社会に引き戻す優しさも欠かせません。取り締まりや矯正の場で出会う大人の存在は、少年の将来にとっても大きいと言えます。

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