中国新聞
2002/06/22
大人の力 (7)
親の「本気」ぶつけよう

先頭に立ち 行動する姿大切

  街の明かり一つ一つが、「ただいま」を待っている  

 この四月、広島市内のある親子に会いました。中学三年の長男(14)はバイク盗などで、家庭裁判所で二回目の審理を受けた直後でした。これまで「暴走族に入りたい」と言って、たびたび家出をし、学校も休みがちでした。

離婚後、三人の子のため働く母(38)は「ずっと下の子たちの面倒を見させ、この子の自由を奪った反動だったのかも」と気に病んでいました。でも長男は、三歳の末の弟をかわいがり、保育園への迎えも引き受けていたそうです。

「家出した時も、こっそり保育園に弟の姿を見に行ったようで…。本当はそういう子です」。母の顔に少し笑みが戻りました。

わが子の本来の優しさを最も知っているのは、やはり親でした。きまりの悪そうな長男を前に母は言い切りました。「この子に『特攻服』は着させない。死んでも私はあきらめない」

審判を待つ長男は今、毎日中学に通い、高校受験の希望を持ち始めたそうです。

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「親は弱いんよね」。暴走族の子を持つ親の葛藤(かっとう)を報告した連載「ただいまが聞きたくて」の取材で出会った父親(46)はつぶやきました。

息子の部屋で特攻服を見つけても「友達から預かっている」という言葉をうのみに。そのうち、高校退学、バイク盗、家出とエスカレート。「親が信じてやらないと」「厳しく言うと、また家出してしまう」。そんな心情が「直接対決」を避けさせたといいます。

ある暴走族の少女(17)は「親とは仲良し」と言います。父は特攻服に身を包む週末の娘に気付いていないそうです。

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「放任」を決め込む親もいました。「暴走族は若い時の『はしか』」「卒業したら落ち着く」「男の子だから」。暴力団の手ごまになり、資金源、人材供給源になって犯罪を連鎖させている実態にもかかわらずです。

その一方で子の暴走を止められず、自信を失い、近所の目を気にして孤立感を深める親にも多く会いました。

ある母親は「正直、親の責任という言葉に押しつぶされそうで」と涙し、「早く警察に捕まってほしい」との言葉を口にしました。これ以上周囲にも迷惑をかけたくない、との思いに胸が痛みました。

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取材班に届く怒り、被害の声は、親にも向けられます。「親は見て見ぬふり?」「保護者責任を問うべきだ」。厳しい内容ですが、親の「本気」を促す声です。

週末、暴走族がたむろするアリスガーデン周辺で、地元の住民や警察、市の職員に加え、行動する親、保護者の姿があってもいいと考えます。

子を「面倒見」の呪縛(じゅばく)から解いてやるには地域、各機関の協力が欠かせません。その先頭にはやはり、親が立ってほしいと思います。

(おわり)

読者と一緒に「ただいま」聞きたい


取材班から

 先日、福山市の読者から「個人の責任はそっちのけで、社会の責任ばかり追及している」「犯罪者に迎合する記事はやめてほしい」との批判のファクスをいただきました。

 昨年来のキャンペーンでは、できるだけ「被害者の声」を重視し、犯罪集団化した暴走族の根絶を訴えてきたつもりです。犯した罪の償い、被害者への心からの謝罪は、社会が彼らの復帰を認める条件です。暴走族メンバーでもないのに高校で「上納金」を脅し取られた揚げ句、命を落とした少年の遺族の取材などで確信しています。

 一方、暴走族の少年、少女たちを社会から突き放せば問題が解決するとも思っていません。やはり「暴走の連鎖」を生み出し、許容する土壌と向き合う必要があると思っています。家庭や地域社会に目を向け、病根を探ることが、平穏な市民生活を守り、都市の「安全、安心、品格」を取り戻すことにつながる―。そう信じるからです。

 粗暴さ、ずるさ、屈託のなさ、幼さ…。さまざまな顔を見せる少年、少女と接するたび、戸惑ったり、腹を立てたり、ホッとしたりの連続です。記者、子を持つ親、地域の一員―としての感情が取材中に交錯し、自分たちの家庭や社会のあり方を考え直させられました。

 ただ、どんな立場からであれ、彼らを暴力団から引き戻す必要があると強く感じています。そして読者と一緒に彼らの「ただいま」を聞きたい。そう願っています。

(暴走族取材班)

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  ■ファクス 082(236)2321   ■電子メール shakai1@chugoku-np.co.jp


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