中国新聞
2002/06/26
断ち切れ 暴走の連鎖  
みんなの「ただいま」が聞きたい
  取材班から5通の手紙

暴力団のパシリになるな

 「こんばんはデス」。週末の夜、みんなは集会場所に現れた「面倒見」にかけ寄り、気をつけして話を聞いとるね。それまで座り込んで周りをにらみつけとった目はオドオド、ビクビク。

 寒い冬の夜でも、面倒見が「解散」の指示を出すまでふるえながら円陣組んどる。ホンマ、あほらしいと思わん? 「暴力団関係者のパシリ(使い走り)」になって、いいなりになって。面倒見に金払ってええことあった? 本当は気付いとるんじゃろ? 面倒見が君らを守ってくれんことを。

 「面倒見はかわいがってくれる」と、みんなは言うよね。でも、金集めのために、ひったくりをした仲間もおるよね。本当はやりとうないのに、集団暴走や窃盗をさせられたり。かわいがっとるなら、みんなに悪いことさせるわけないよ。

 警察はみんなの仲間の一部を暴力団の「準構成員」と認定しとる。「暴力団に協力する人物」というわけ。言いなりなんじゃけえ、そうなるよ。一生「暴力団関係者」でええか? ろくなことにはならんで。縁を切れ。暴力団にペコペコする姿は、もう見とうない。

18歳まで?甘えるな

 「卒業したら落ち着く」「ボウソウは今しかできん」。みんなそう言うよね。18歳になるまで「族」を続け、人の迷惑はどうでもええ、いうこと? それは幼稚なわがままだ。

 単車で暴走するだけじゃないじゃろ。バイクは盗むし、恐喝、傷害、ひったくり。自慢げに窃盗のやり方を話すやつもおった。「犯罪」と「遊び」が一緒になってマヒしとるんよ。

 悪いことをしたら警察に捕まる。カンベツ(鑑別所)やネンショ(少年院)に行く。そんな遠回りがしたい?

 確かに18歳で族をやめて、がんばっとる人は多い。勉強や仕事に打ち込んだり、家庭を作ったり。「リターンマッチ」に挑むのはカッコええし、りっぱだ。でも、遠回りした分だけの苦労は、覚悟したほうがええ。やっぱり世の中、まじめにやってきた人が優先されるのが当然だろう。

 今、景気が悪いの知っとるよね? 仕事につくのも大変。それに族を好んでやとってくれるわけがない。18歳まで好き放題して「なんとかしてくれ」なんて言えると思うな。まじめにしてきた人がバカ見るよ。

 「18まで」と言わず、はようやめた方がええ。

 被害者に謝らんといけん

 取材班に、長い間子どもが入院している母さんからメールが届いとる。「バイクの爆音で重い病気の子どもが目を覚まし泣きます」。考えてみてや。病気で弱った小さな子と一つのベッドで寝ながら、耳をふさぐお母さんの姿を。

 みんなの仲間が犯した犯罪の被害者に、多く接した。ひったくりにおうて、怖くて外に出られんようになったおばあちゃん。言いがかりをつけられボコボコにされ、心にも体にも傷を受けた女の子。仕事に使うバイクを盗まれ困り果てる人。リンチで大けがをした高校生のお母さんはこう言った。「やった方はまじめになれば忘れてしまえるけど、被害者はいつまでも忘れない」

 みんなからは「ネンショやカンベツがつらかった」とかの声はよう聞くけど。謝罪や反省の言葉はほとんど聞いたことがない。

 アリスガーデンなどでの集会も同じ。みんなは「だれにも迷惑をかけてない」と言う。「怖がる方が悪いんよ」と開きなおったりする。トッコウ着た気味の悪い集団に、わざわざ近づきたいわけないよ。

 まさか「少年じゃけえなんでも許してもらえる」とは思うてないよね。

トッコウ着て群れるのやめようや

 アリスガーデンなどで集会をやめるよう声をかける人たちに、みんなは「集まるくらい自由じゃろう」と口ごたえするよね。「表現の自由じゃ」という声も聞いた。

 でもトッコウ(特攻服)を着て集まって、だれに、なにを表現したいのか? さっぱり分からん。まさか「おれらは交通ルールを守らん暴走族です」と宣言しとるん? なおさら自由なんて認めるわけにはいかん。

 トッコウを着とるみんなを見て「ワルの集まり」と怖がる人も多い。でも、みんなと同世代のほとんどの子は言うとるよ。「イマドキあんなの着て、ダッサー」。カッコええと思うとるのは、どうもみんなだけのようだ。

 広島以外から来た人からは「広島にはまだあんな服着たのがいるんですね」という声を何回も聞いた。ホンマに恥ずかしゅうて、かなわん。

 トッコウ着て群れんと何もできん自分らに気づいた方がええ。いつまでも自己満足でいるから「珍走団」なんて言われるんよ。

 ニッカーボッカーやバイト先の店の制服を着たみんなの仲間も見たけど、トッコウの時よりよっぽどカッコよく、輝いとった。もっとおしゃれをして「カッコええ自分」を主張してほしい。

社会のルールの中で力を出そう

 みんなの「ルール」は分からんことだらけ。たとえば「ケジメ」と呼ぶリンチ。みんなはふだん、「ボウソウは団結力がある」といばるじゃない。なのに族を抜けようとする仲間に暴力を振るうよね。要するに暴力でしか団結できんわけよ。

 まさか、だれかがやめたら面倒見に出すお金が減るけえリンチするん?

 みんなは「スジを通すため」というよね。金のためのリンチとしたら、これほどセコイ話はないね。

 「レイギを守る」。みんなはよう自慢する。でも、レイギ正しくするのは、暴力団や面倒見やセンパイだけじゃろう。全然知らん人には、平気ですごんでみせる。

 族をやめてプロボクサーになった少年に会った。けんかの強かった彼も、最初はリングで一方的にやられたらしい。「同じルールで戦ったら、まじめに鍛えたやつの方が強い」。そう言うとった。

 ちっぽけな族の世界の勝手なルールだけに従うのは、もうやめようや。外の世界では勝負もできん小さい人間になるな。社会のルールの中で力を証明しようや。

追伸

 3年前のえびす講で、みんなの仲間やセンパイが警察とぶつかって、広島の暴走族の無軌道ぶりが全国に知れわたった。ホンマ恥ずかしかったし、腹が立った。その後も暴走や窃盗などの犯罪、公園を独り占めする集会と好き放題。しかも暴力団にかこわれて…。これは放っておけん、と思うた。だからみんなに「ウザイ(うっとうしい)」と思われる厳しい記事を書いてきた。

 族に集会をさせん広島市の暴走族追放条例ができたのも、多くのおじさん、おばさんたちが「家に帰れ」とみんなに声かけるのも、同じ気持ちから。みんなを暴力団から引き戻し、広島をええ街にしたいんよ。

 族に入ったわが子が帰るのを待って、毎晩電気をつけた居間で泣いていたお母さんを取材した。「ただいま」の声を、心から聞きたがっていたのが忘れられない。

 家も、学校も、職場も、広島の街も同じ思い。みんなの「ただいま」を待っている。トッコウ捨てて帰ってきんさい。

2002年夏 中国新聞暴走族取材班より

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