中国新聞
2002/09/05
断ち切れ 暴走の連鎖  
2002年度新聞協会賞受賞  
「家に帰ろう」思い一つに

 中国新聞社のキャンペーン「断ち切れ 暴走の連鎖―『ただいま』が聞きたくて」が、二〇〇二年度の日本新聞協会賞編集部門の授賞作品に選ばれた。

 授賞理由は、次の通り。

 「九九年の『えびす講』で暴走族と機動隊が衝突した事件以来、行動が激化した暴走族の実像に迫り、少年たちの親の葛藤(かっとう)や、普通の街を取り戻したいと立ち上がる市民の動き、面倒見と呼ばれ少年たちに巣食う暴力団の存在を追及するなど粘り強い取材を続け、広島市の暴走族追放条例制定など、成果をもたらしたキャンペーンとして評価される」

 昨年の九月、米国・ニューヨークで起きた同時多発テロは、気の遠くなるほどに巨大な暴力でした。その後も国際社会は対話を失い、報復を連鎖させました。

 テロ事件と同じころ、「平和都市」広島では、身近な暴力がまん延し、市民生活を脅かしていました。暴走族少年らによるひったくりや恐喝、「特攻服」をまとっての市街地の広場の占拠…。目を覆うような「暴走の連鎖」の背景には、「面倒見」を介した暴力団の影が控えていました。

 テロや核兵器といった巨大な暴力だけでなく、身の回りの暴力を直視し、断ち切ろう―。「断ち切れ 暴走の連鎖」キャンペーンを始めた時の思いです。

 以来、暴走の連鎖の被害を伝えるとともに、連鎖に組み込まれた少年、少女たちと向き合い、家庭の葛藤(かっとう)や地域の取り組みを追ってきました。

 ある母親は、暴走族に入った息子が「ただいま」と帰って来ることを願い、毎晩居間の電気をつけたまま浅い眠りを取っていました。取材班の願いも母親と同じです。社会が力を合わせ、少年たちを面倒見の呪縛(じゅばく)から取り戻す必要があると痛感しました。

 今年二月には、市の中心部で約二百五十人の住民が暴走族少年らに「家に帰ろう」と促す「呼びかけ運動」が始まりました。それに呼応した動きが各地で広がりを見せています。地域の思いと、取材班の思いとの一致を実感しています。

 住民の動きに後押しされ、広島市は暴走族の集会に罰則を科す、全国でも例のない暴走族追放条例を四月に制定しました。暴走の連鎖を断ち切る環境は、前進したと言えます。

 一方で、週末の広島の市街地では今も「特攻服」の少年たちが姿を見せ、その周辺で面倒見たちの影がちらつきます。社会の声は、まだ彼らに十分届いていません。

 このページで紹介している電子メールが取材班に届いたのは、六月中旬でした。何年も前の傷跡をいやせずにいる現実が伝わり、胸の詰まる思いです。

 最愛の家族も打ちのめす暴走の連鎖は、決して若さゆえの過ちではありません。少年、少女たちの心からの「ただいま」が聞ける方法を、これからも読者と一緒に探したいと思います。

(暴走族取材班)
 
 
(写真左)住民約250人が暴走族少年たちに「ノー」を突き付けた初の「呼びかけ運動」。寒風の中で、取材班も胸が熱くなった(2月16日夜、広島市中区のアリスガーデン)
(写真右)キャンペーンで展開した主な連載や特集

 私の兄もかつて暴走族に入っていました。

 中学の終わりころからだんだんと付き合う友達が変わり、家族に対して暴言を吐いたり暴力を振るったり…。食事の時に目が合っただけで皿ごと料理を投げ付けられたこともありました。

 妹である私は一番の標的となり、何かにつけ暴力を受けました。母は私をかばうのであざが絶えず、夏にもかかわらず半そでを着ることができませんでした。

 また特攻服の刺しゅう代を得るために家のお金を持ち出したり、母や祖母の指輪や時計、家電製品を質に入れたりもしました。面倒見である暴力団の人からもたびたび自宅に電話があり、電話線を抜いていたこともありました。

 両親はなんとか暴走族をやめさせようと、いろいろ努力していました。兄が学校をやめると言った時には、高校だけは卒業させてやりたいと学校の近くに家族で引っ越しまでしました。

 結局、兄は警察に捕まるまで暴走族をやめませんでした。今は兄も結婚をして子どもが生まれ、まじめに働いていますが、私は一生兄を許すことはできないでしょう。

 私をかばって殴られ、あざのできた母や、兄のために引っ越して転校せざるを得なかった私に泣きながら謝罪した父の顔は、決して忘れることはできません。

 あのころから兄とは口をきいていませんが、兄はあのころのことをどう思っているのでしょう…。でも、どう思っていようと過去は消せないのです。

 暴走族の数だけ、それにかかわるたくさんの家族や人間がいるのです。どうか自分の周りの大切な人たちを傷付けるのはやめてください。

広島市 23歳
(読者の電子メールから)

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