JR広島駅西側の通称「エキニシ」(広島市南区)で30軒が延焼した火災から17日で1週間。短時間に広がった火災は、古い木造建築が密集した地域の脆弱(ぜいじゃく)さを浮き彫りした。一方で、私有財産が絡み、法的な規制が直接及ばない実態もあり、レトロな街並みを残しつつ防火性を高める道筋は見えにくい。専門家は、行政の積極的な支援など新たな取り組みの必要性を指摘している。
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エキニシは141軒の建物が密集し、2、3階程度の民家や飲食店がほぼ隙間なく軒を連ねている。「壁伝いに火が広がったのではないか。あの構造ではいったん火が出ると、一気に延焼する」。このエリアを管轄する広島南署の幹部は指摘する。
一帯は、耐火性を備えた建物の建設を法で義務付けた「防火地域」に指定されているが、多くの物件は全体が指定された1976年より前に建てられた。現行の基準の耐火性能は満たしていないが、違法ではない「既存不適格」の建物が多いとみられる。延焼しやすい構造は残ったままで、2018年にも火災が発生。19軒が焼け、1人が亡くなった。
「既存不適格」の建物であっても、新築や修繕する場合は、現行法の基準に沿う必要がある。柱や壁などの主要部分の半分を超えて修繕する場合は、市に建築確認を申請し、チェックを受ける必要があるが、18年の火事に伴う申請はなかったという。
「建物を建て直してもらう強制力は行政にはない。個人の権利や財産が絡む難しい問題だ」と南区建築課。エキニシに「既存不適格」の建物がどれだけあるかも把握していない。
▽「この雰囲気残したい…」