海老崎粂次さん

 

錦帯橋 緻密に架け替え

 

 岩国市にある国名勝・錦帯橋の半世紀ぶりの全橋架け替えを棟梁(とうりょう)として指揮した。2001~04年、約30人の職人をまとめ上げて臨んだ「平成の架け替え」。江戸期創建の名橋を再建し続け、今につなげた先人たちへの敬意を胸に、地元大工の意地と誇りをぶつけた。

 古い図面と向き合い、学びながら試行錯誤を繰り返した。「木造の世界で、1橋100尺(約30メートル)を超える技術は奇跡。それを江戸の時代から造り上げていた」。こだわったのは精緻なアーチ。30段ある階段の板材を、前回の1953年の「昭和の再建」時より、上部に向かうにつれ1ミリずつ低く組み合わせた。錦帯橋の工事に関わった祖父と父の教えも生かした。

 今も歩みを止めない。19年には、1橋分の一部を2・5分の1サイズに再現した模型(長さ8メートル)を造った。神戸や広島など全国を回り、今年は3月から9月まで米ニューヨークで展示された。来年にはポーランドやフランスを巡る予定だ。

 「職人たちが350年、連綿と技術や思いを受け継いできた。多くの人に知ってもらうため、できる限りのことはしたい」。年に3、4回、全国の若い職人たちに、錦帯橋の歴史や木組みの構造を指導している。

 錦帯橋そばの岩国城下町で生まれ育ち、高校への通学で毎日橋を渡った。腕を買われ、厳島神社の修復など各地の社寺や文化財の修復に携わる経験を持つが、地元大工として、城下町の古い家屋の改修や修繕を請け負うことが多い。

 最近、うれしいニュースがあった。錦帯橋と城下町一帯が山口県内で初めて国の重要文化的景観に選定されたことだ。自然を生かして形成された景観が、現代の人々の営みや町並みに受け継がれ、自らの仕事もその一翼を担ったと実感する。「住民が守り住みたい、若い職人たちが手本にしたい、そう思えるような仕事をする」。地域に根差す姿勢は揺るぎない。(有岡英俊)

 えびざき・くめつぐ 岩国市生まれ▽1969年、近畿大理工学部卒▽99年、岩国伝統建築協同組合理事長▽錦帯橋の平成の架け替えの功績が認められ、2005年度「卓越した技能者」(現代の名工)▽07年、黄綬褒章▽19年、NPO法人伝統木構造の会会長