2019年7月の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、公選法違反(買収、事前運動)の罪で起訴された河井克行・案里夫妻。地元政界を大きく巻き込んだ事件の公判で、夫妻は無罪を主張し、検察側と全面対立の展開となった。公判の内容と関連する動きを詳しく伝える。
争点
起訴状によると、克行被告は2019年3~8月に計128回、案里被告を参院選広島選挙区で当選させる目的で広島県内の地方議員や首長、後援会の会員ら100人に票の取りまとめなどを依頼し、計2901万円を渡したほか、うち5人については、案里被告と共謀して計170万円を渡した疑い。
公判では、克行、案里両被告が渡したとされる現金の「趣旨」が最大の争点となる。中でも、地方議員や首長だった40人に注目が集まる。
一方、両被告は無罪を主張。現金提供はおおむね認めた上で「投票や投票の取りまとめを依頼する趣旨で供与したものではない」と買収目的を否定している。また、弁護側は、検察が有利な供述を得るため、地元議員らとの間で刑事処分を見送る違法な取引をしたとして、公判を打ち切る公訴棄却を求めている。
公判では、克行、案里両被告が渡したとされる現金の「趣旨」が最大の争点となる。中でも、地方議員や首長だった40人に注目が集まる。
一方、両被告は無罪を主張。現金提供はおおむね認めた上で「投票や投票の取りまとめを依頼する趣旨で供与したものではない」と買収目的を否定している。また、弁護側は、検察が有利な供述を得るため、地元議員らとの間で刑事処分を見送る違法な取引をしたとして、公判を打ち切る公訴棄却を求めている。
現金持参時の発言
受け取った側の中国新聞への証言から、現金を配る際、克行被告は硬軟織り交ぜた言葉や手法を使ったとみられる。「受け取れ」。克行被告に面会を求められ、安佐南区内の事務所に出向いた元地方議員は、机に白い封筒を置かれて固まっていると、そう言葉を浴びせられた。地方議員へ現金を渡した名目の多くは、昨年4月の統一地方選の「当選祝い」。ある県議によると、当選から間もなく、一度も会ったことのないはずの克行被告が自身の事務所を訪問。「人気があるんだねえ」と30万円入りの封筒を置いて帰った。政治家の先輩には低姿勢だった。あるベテラン議員には「案里をお願いします」「わずかなものですから」と50万円を渡した。
後援会員たちには「みなさんで食事でも」「燃料代」などと言って、小遣いを渡すように駆け足で配り歩いた。巧妙といえる手口を明かす声も。「激戦だから、これを読んで」。安佐北区の男性には、参院選の情勢を報じる週刊誌の記事のコピーを渡した。二つ折りにした間に5万円を挟んでいた。別の女性宅では、茶を用意してもらっている間に席を立ち、机に5万円入りの封筒を残していた。
後援会員たちには「みなさんで食事でも」「燃料代」などと言って、小遣いを渡すように駆け足で配り歩いた。巧妙といえる手口を明かす声も。「激戦だから、これを読んで」。安佐北区の男性には、参院選の情勢を報じる週刊誌の記事のコピーを渡した。二つ折りにした間に5万円を挟んでいた。別の女性宅では、茶を用意してもらっている間に席を立ち、机に5万円入りの封筒を残していた。
原資
両被告が地方議員らに配った2901万円の原資も大きな焦点。参院選前に自民党本部から夫妻側に渡った1億5千万円の使途もなお不透明だ。司法の場で実態がどこまで明らかになるのかも注目される。
両被告が支部長だった二つの政党支部には、案里被告が参院選の自民党公認候補に決まった2019年3月13日以降、同4~6月に党本部から計1億5千万円が入金された。うち1億2千万円は税金が原資の政党交付金からだった。
ただ、両支部が参院選後に県選管へ出した報告書では1億5千万円の使い道は判然としない。東京地検は両被告を起訴後、原資について「必要があれば、公判で明らかにする」と述べた。
両被告が支部長だった二つの政党支部には、案里被告が参院選の自民党公認候補に決まった2019年3月13日以降、同4~6月に党本部から計1億5千万円が入金された。うち1億2千万円は税金が原資の政党交付金からだった。
ただ、両支部が参院選後に県選管へ出した報告書では1億5千万円の使い道は判然としない。東京地検は両被告を起訴後、原資について「必要があれば、公判で明らかにする」と述べた。
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