安定的な皇位継承などを検討する政府の有識者会議が、最終報告書を取りまとめ、岸田文雄首相に提出した。

 当面の課題である皇族数を確保する案は示したものの、本筋である皇位継承策については「将来判断すべき事柄」として議論を先送りした。

 2017年6月に天皇退位の特例法が成立した際、国会は付帯決議で、安定的な皇位継承を確保するための課題などを検討するよう政府に求めていた。

 有識者会議はしかし、有力視される女性・女系天皇の是非などのテーマに踏み込むことはせず、「皇族数の確保」に論点をすり替えてしまった。これでは国会の要請に応え、責任を果たしたとは言えまい。

 次世代の皇位継承資格者が秋篠宮家の長男悠仁さましかいない現実を直視すれば、先延ばしする時間的な余裕はないはずだ。政府と国会は、国民的な議論を深め、結論を棚上げすることなく、現実的な安定継承の方策を見いださなければならない。

 皇室は天皇陛下と上皇さま、皇族方の計17人からなる。女性皇族は結婚すると、皇籍を離れる規定になっており、皇族数の先細りは避けられない。天皇陛下の長女愛子さまも秋篠宮家の次女佳子さまも昨年結婚した同家の長女眞子さんと同じように、結婚すれば皇室を離れる。

 悠仁さまと同世代の皇族がいなくなるようなことになれば、皇族が分担している公務に支障を来す可能性がある。皇族数減少への対応が喫緊の課題であることには異論はない。

 有識者会議は確保策として、女性皇族が結婚後も皇室に残る案と、戦後に皇籍を離れた旧宮家の男系男子を養子縁組で皇族に復帰させる案を示した。それでも不十分な場合、法律で旧宮家の男系男子を直接皇族にする案も付け加えた。

 ただ、いずれの案も皇族数が若干増えるだけで抜本的な解決策には程遠いとの指摘がある。

 女性皇族が結婚後も皇籍を保持する案では、配偶者や子どもは皇族としない方針という。政治、経済、宗教の自由が保障されるのかといった課題も残されたままだ。男性皇族と結婚した女性が皇族となるのに、女性皇族と結婚した男性が皇族にならないことにも違和感が残る。

 旧皇族の養子縁組も問題点が多い。旧皇族の男系男子だけが特権的に養子の対象になっており、「門地(家柄)による差別」を禁じた憲法に違反する恐れがある。

 さらに70年以上も前に皇籍を離脱した旧宮家の子孫らが、再び皇族になることに対して、国民が抵抗なく受け入れられるかどうかも見通せない。

 いずれも無理筋ではないか。実現性にも疑問符が付く。たとえ皇族数を一時的に増やすことができても、それだけで皇室の安定につながるとは思えない。

 小泉政権が設置した有識者会議は05年、女性・女系天皇を認める報告書をまとめている。旧民主党政権も女性宮家創設の検討を進めた。共同通信の世論調査でもここ数年、8割前後の人が女性・女系天皇への賛意を示している。

 議論の場は今後、国会に移る。皇位継承策を巡る論点は出そろっている。女性・女系天皇の問題から逃げることなく、幅広く議論を尽くす必要がある。