新型コロナウイルスとの闘いの出口は依然としてはっきりしない。それでも傷ついた地方の経済を再生し、衰退に歯止めをかけなければ、未来の安心な暮らしは描けない。

 感染症は人の大勢いるところで猛威を振るう。都市部、とりわけ東京一極集中のリスクを浮き彫りにした。このコロナ禍をかねて問題視されてきた過度な人口集中を是正するきっかけにしたい。都市と地方の在り方を見直し、分散型の国造りに踏み出さなければならない。

 地方の人口減少が始まってほぼ20年がたつ。地方からは東京を含む首都圏へ人や産業が流出し続け、集落の維持さえ難しくなってきた地域も出ている。

 このままでは半数の自治体が消滅する可能性がある―。民間研究機関の推計が衝撃を与えたのは2014年のこと。その年、当時の安倍晋三首相は「故郷を守る」と訴え、「地方創生」の旗を掲げた。

 20年までに東京圏への転出入を均衡させる目標を定めたものの、転入超過が続いた。日本全体の人口は08年をピークに減少に転じている。その中で東京への一極集中が進めば、地方の衰退がさらに深刻化する。地方創生の行き詰まりは明らかだ。

 ところがコロナ禍によって変化の兆しがもたらされている。

 首都圏を中心に多くの人がテレワークを経験し、「転職なき移住」への関心も高まっている。社員が出社しなくてもインターネットを使って仕事ができる。東京に本社を置く必要はないと考える企業も増えている。

 実際、東京から転出する人も増えている。昨年11月のデータでも7カ月連続で人口が流出していた。東京から周辺県への転居が多いが、一極集中の是正につなげるチャンスと言えよう。コロナ禍で芽生えた地方への関心を実らせ、人や企業が地方へ向かう流れを太くしたい。

 そういった観点から、岸田文雄首相が看板政策に掲げる「デジタル田園都市国家構想」の方向性は一定に理解できる。地方のデジタル基盤を整え、人口減少や人手不足といった課題を解決し、都市と地方の差を縮めることを目指す―としている。

 デジタル人材を26年度までに230万人確保するなどの数値目標を示し、総額で5兆7千億円を投じると昨年末に表明した。ただ目新しさには乏しい。テレワークの導入支援やオンライン行政のための交付金を創設するが、似たような交付金は地方創生にもいくつもある。

 地方創生では、地方自治体に計画を作らせ、国が認めた事業に充てる交付金を配ってきた。こうした補助金行政が、政策立案における地方自治体の自主性を損なった面も否めない。

 新たな田園都市国家構想は地方創生の看板の掛け替えとの見方もある。中央集権的な手法を用いれば、同じような失敗を繰り返すことになりかねない。中央と地方の上下関係をただし、地方自治体が主体となって地域の実情に合わせた政策をとれるようにする必要がある。

 人口の減少は国全体で進行しており、パイの奪い合いをしても仕方ない。さまざまな規制で東京圏の成長性を抑えることも現実的ではなかろう。「地方か、東京か」の二項対立から脱し、互いに補完機能を発揮し、共存共栄の道を探るべきだ。