737Cを確かめる伊藤さん。再生後、フランスを走らせたい考えだ

 マツダのルマン24時間耐久レース専用車では現存最古となるロータリーエンジン(RE)車を、広島市安佐南区の伊藤英彦さん(42)が再生している。1985年にレースを完走した737Cで、世界に2台しかない車。2020年に購入し、完成まであと一歩にこぎ着けた。「広島が誇る車。責任を持って復活させる」。フランスを再び走らせる日を夢見ている。

 真っ白な外観が目を引く流線形の車体。「見るたび、美しいと思う。元の状態に戻すのが僕の使命」。70年代などの旧車を売る会社クロマを経営する伊藤さんの言葉に熱がこもる。

 前の所有者が動かなくなった737Cを売却しようとしていたが、新型コロナウイルス禍で海外との商談が進まなくなったのを知り、心が動いた。レースを走ったもう1台は、オランダの博物館に展示されるほど貴重。広島に残して直すことに意義を感じ、「頑張って」買い取った。

 外装や構造は当時の設計者の協力で復元した。REは自動車販売の広島マツダ(中区)に修理を依頼。「シール」と呼ばれる小さな部品を交換し、エンジンは動くようになった。ロゴも忠実に再現。探し続けたタイヤは21年12月、調達のめどが立った。微調整と試運転を残すだけになった。

▽ルマンは23年に100周年

 ルマンは23年に100周年を迎える。マツダは737Cの後もRE車で挑戦。91年、日本勢初の優勝を787Bでつかんだ。737Cの元ドライバーの寺田陽次郎さん(74)=東京=は「きびきびと動き、その後の優勝への蓄積に貢献した車だった。タイムスリップした気分。大切にしてくれてうれしいね」と喜ぶ。

 伊藤さんは歴代の出場車が集うルマンの催しに照準を定める。「走る姿をもう一度見せたい。懐かしがるファンが世界中にいるはずだから」(井上龍太郎)