シイタケのほだ場を確認する松田さん。針葉樹の間から木漏れ日が差し込む

 木を植えて、切って使って、また植えて―。林業は一巡りの年月が長い。島根県川本町の林業松田直美さん(66)は祖父、父の山仕事を引き継ぎ、40年以上になる。自宅近くの標高約300メートルにある所有林を案内された。シャッシャッシャッ。落ち葉を踏みしめ、松田さんは顔をほころばせた。「いい音ですよね。山や木の景色を見るのは気持ちいい」

【めぐる森林】プロローグ<上>木が語る、人との距離 ルポ・島根県邑南町の山を歩く

 クヌギの林が見えてきた。約1メートルに切りそろえたシイタケ栽培用のほだ木も並ぶ。約3千本。組んだ木の中には落ち葉を入れて湿度を保つ。シイタケのかさが雪に当たって変色しないように袋をかけ、冬を越す。

 「もうける山」と表現する。木材価格が輸入材のあおりで下落した1980年代、南向きの土地にクヌギを増やし始めた。木を売って成り立っていた生計が厳しくなり、徐々にシイタケ栽培を収益の柱へと変えた。

 高さ20メートルを超えるスギやヒノキの人工林も訪れた。こちらは「残す山」という。戦後に祖父の直之さんが雑木を切って植え、父の隆吉さんが継いだ。「おやじは将来のためにと植えてくれたんだけど、今は見て楽しむしか仕方ない」。再び高値で取引される時代を待ち、残していく。

▽木材価格、40年で4分の一に