黄色や赤の目立つ表示で「降車OK」を知らせるグリーンムーバーLEXの中扉(完成予想図)
「グリーンムーバーLEX」型の車両

 広島電鉄(広島市中区)は5月10日から、路面電車の一部でICカード利用者に限り、乗車専用だった中扉からも降りられるようにする。「全扉降車」方式と名付け、スムーズな乗降で定時運行を図る。「Suica」など全国のICカードが3月中旬に広電でも使えるようになり、IC利用が8割に達したため実施に踏み切る。

 全扉降車は、同社の124両・編成のうち「グリーンムーバーLEX」型の低床車14両で始める。車体が18・6メートルと長めで、混雑すると乗客が車内を移動しづらいため、運転士のいない扉でも降車できるようにする。

 中扉には、運賃支払い用のカード読み取り機を新設。乗降の様子はカメラで撮影し、運転士は支払わずに降りる不正がないか、モニターで確認する。現金や、複数人でICカードを使うときは従来通り前扉から降りる。事業費2100万円は、昨夏の運賃値上げに伴う増収分を充てた。

 全扉降車は「信用乗車」とも呼ばれ、欧米では一般的な方式。広電は2012年に約1カ月半、一部車両で試行し、無賃乗車や降車客を扉で挟むなどの事故はなかった。ただ、当時はICカードの利用が今より少なかったため、本格導入を先送りしていた。

 導入は、国内の路面電車では富山ライトレール(富山市)に次いで2番目。広電は、安全面や無賃乗車などの問題がなければ全車両への拡大も検討する。

 同社電車企画部は「高齢者などが乗り降りしやすくなる上、だんご運転の解消につながる期待もある。不正乗車を防ぐために、乗客の間でも目を配ってもらえればありがたい」としている。(馬場洋太)