近赤外線の照射を準備する上田准教授(左)。患部への照射が始まると光線は赤く変わる

 広島大病院(広島市南区)が10日、がん細胞を光で破壊する新しいがん治療法「光免疫療法」を広島県内で初めて実施した。現時点の治療対象は、口や喉など頭頸部(とうけいぶ)にできるがんで、1例目は口腔(こうくう)がんを患う県内の70代男性。再発や転移をした患者に限られるものの、がんを狙い撃ちできる有力な治療として期待が高まっている。

 この日の午前、通常より明かりを落とした手術室で、全身麻酔をした男性の口の中の腫瘍の表面に向け、耳鼻咽喉科・頭頸部外科の上田勉准教授たちが赤い光線を照射した。光線を出すワイヤを付けた針を腫瘍に刺して、腫瘍の内側からも光を当てた。1カ所当たりの照射時間は5分程度で、計6カ所に当てた。

 光はテレビのリモコンなどに使われる近赤外線。男性は前日に、特定のがん細胞の表面にだけくっつく抗体の点滴を受けた。この抗体には近赤外線を吸収する物質が含まれる。近赤外線を当てると反応し、がん細胞がピンポイントで壊れる仕組みだ。がん細胞破壊時に、体内の免疫細胞が活性化することも期待される。

 光免疫療法は、米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員が開発。従来の治療で治らず、再発、転移した頭頸部がん患者を対象にした臨床試験では、30人のうち4人のがんが消え、9人で縮小、11人は病状が悪くならなかった。日本では世界に先駆けて実用化。ことし1月、頭頸部がんを対象に保険で治療できるようになった。

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 ▽光免疫療法、将来的には…