「Ngroup(エヌグループ)」(広島市南区)は、「長井ゼミ・ハンス」で知られる学習塾を経営する株式会社、整形外科や心療内科などを営む医療法人からなる。医師として、塾講師として長年活躍してきた長井敏弘代表に、グループ運営の理念や方向性、学生へのアドバイスを聞いた。

(聞き手は広島女学院大・鬼木彩名、県立広島大・三反田夏歩、安田女子大・中田裕奈)

 ―大学時代に力を入れていたことは何ですか。

 私は広島大の工学部を出て広島市職員になり、1年で辞めました。土木作業員やセールスマン、高校の先生などいろんな仕事をし、27歳の時、広島大医学部に入り直しました。工学部にいた頃は将来設計が全くなかった。社会経験がなく何をしていいか分からない。皆さんも、高校から大学に進む時、迷わなかったですか。一生の仕事を20歳前後で決めるのは難しい。

 ―なぜ、医学の道へ。

 自分に合わないと思った公務員を辞め、将来の職探し。つくづく思ったのは、人間は落ちようと思ったらとことん落ちていくということです。正直怖かった。医師を志したのは、自分にとってのセーフティーネット。資格を取っていたらとものすごく勉強した。

 ―医学部在学中は、どんな学生生活を送っていたのですか。

 結婚もしていたし、勉強しながら生活費も稼がないといけない。医学部は、社会人を経て入る人もけっこういます。そんな仲間が集まって「一緒に塾を」と始めたのが長井ゼミの前身です。家庭教師の生徒15人くらいからスタートしました。人気が出て、医学部を卒業して研修医になるタイミングで、全国展開する予備校からヘッドハンティングされました。東京から衛星放送の授業もあり、同時に1万人くらいを教えていました。そんな時、お世話になった医学部の恩師と再会。大学病院の救急、精神科病院で勤務することになりました。先生からは、回り道していろんな世界を知っているから心療内科にと言われました。

 ―今の仕事で大学時代に頑張ったことがどう生きていますか。

 いろいろな経験をしていると、患者さんの苦しみやつらさが自分に置き換えて分かり、医者として役立っています。当初、患者さんから「先生って患者の目を見て話しますね」と言われました。しっかり相手の話を聞く大切さを表しています。

 ―学習塾の特長は。

 生徒との距離感がすごく近いことです。ただ教えることは絶対にしない。成績を上げるのが塾の使命かもしれませんが、勉強を通して生徒の相談に乗ったり親に言えない悩みを聞いたりします。「勉強しなさい」とは言わない。勉強を楽しむには、知的好奇心を刺激する必要があります。日本の教育でいけないのは、こうだと決めつけた指導法。それだと勉強は全然楽しくない。「なるほど」と本人が思うと、脳のへんとう体が動いて好奇心を刺激され、やる気が出て、もっと知りたいと思います。そうした教育を通じ、医学部に入る生徒が多いです。

 ―学生へのメッセージをください。

 日本人はすごく人目を気にします。アインシュタインを知っているでしょう。子どもの頃は変わり者と言われていたそうです。ゆかりの有名なイラストがあります。象や魚、サル…。いろんな生き物に不公平がないよう、同じ試験で評価するという場面。後ろの木に登ってみてと。魚には無理ですよね。人間も同じ。10人を一つのテストで順位付けするのはナンセンス。個性があります。評価なんかすべきではありません。自分が他人より優れている個性を伸ばすのが一番大切。好きなように生きればいい。若い時は突っ走って、いくらでも軌道修正できます。私は今も、夢を持っていて、ジャズピアニストを目指しています。

▽ながい・としひろ 広島大工学部を卒業後、広島市職員などを経て広島大医学部に27歳で入学。在学中に進学塾「長井ゼミ」を設立した。医師としては、大学病院や精神科病院などに勤務。2020年から現職。著書に「医学でうかる勉強法」など。広島市南区出身。

▽Ngroup 本部は広島市南区。1985年に創業。株式会社のアルツト、ハンス両社の下で学習塾計32校を営む。医療法人ハンスは、整形外科や内科などの宮内総合クリニックのほか、美容内科や心療内科も運営する。従業員数は正社員117人、非常勤96人(2022年1月現在)。

▽インタビューを終えて

 広島女学院大3年・鬼木彩名(21)

 「何度でも軌道修正できるから、後悔がないようやりたいことを何でもすればいい」という言葉が印象に残った。私は、興味を持っていても挑戦すらしないことが多かった。悪いと感じる経験でもプラスに変わることがあると学び、たくさん挑戦したいと思った。

 県立広島大2年・三反田夏歩(20)

 たとえ思い通りにならなくても、置かれた状況で精いっぱい頑張れば、人生で必ず役に立つということを教わった。医師の学びを塾運営にも生かしていることがとても印象的。さまざまな分野の知識を相互に生かすことは、人生を豊かにすると強く感じた。

 安田女子大1年・中田裕奈(20)

 「一つの尺度で順位を付けてはいけない」という言葉が印象に残った。塾はテストの結果を大切にするイメージが強いが、個性を伸ばすことがこの塾の強みだと分かった。「若い時は後悔しないよう突っ走った方がいい」という言葉を胸に、挑戦していきたい。

長井代表(左端)にインタビューする、右から中田さん、三反田さん、鬼木さん