広島マツダ(広島市中区)は、マツダ車の販売やメンテナンスを長年手掛け、最近は観光や飲食など多方面に事業を広げる。現在のグループ企業は計26社。多角化を通じ、若手社員の挑戦の場を創り上げる松田哲也会長兼最高経営責任者=CEO(52)=に会社運営の理念や今後の方向性、学生へのアドバイスを聞いた。

(聞き手は広島国際大・古川桃圭、安田女子大・江木桃花、広島修道大・藤原杏)

 ―学生時代にどんな活動をしてきましたか。

 僕は、親に反抗していた子ども時代を送っていました。大学に入ってから落ち着いてきた感じ。僕らの学生時代は学校が荒れていましたが、友達を頼り、学校の先生も味方に付けて有意義に過ごしました。大学に入ってからはアルバイト、バンド、劇団にも入っていて、学外の活動に力を入れていました。こうして対外的な交渉能力が養われたのかもしれません。大人の世界に入っていましたから。

 ―社会人になってその経験がどう生きていますか。

 昔から嫌とは言わない性格でした。とにかく、やってみる。その経験から経営理念を導きました。「happyhappy(あなたの幸せが私の幸せ)」は、出会った人と全力で向き合っていくということ、「spechigher(誠実な努力で日々成長)」は見えないところで自分の力を常に高めていく努力をしていこうという意味。人生そのものだと思います。

 ―会社の特徴は。

 多角化です。マツダ車のディーラーの中では世界で最も古い、歴史と伝統がある会社。信用と実績を積み上げてきました。原爆で社屋がなくなり、広島の発展とともに徐々に人が戻ってきて、車が生活必需品になり、広島マツダも大きくなってきました。広島に育てられた会社。広島に貢献していく思いがDNAとしてつながってきています。

 ―平和記念公園(中区)の近くに、おりづるタワーをなぜ造ったのですか。

 売り出された時、屋上から見た景色に一目ぼれしました。一番感動したのは、原爆ドームの向こうに広がる街の景色。廃虚になった広島に人が帰ってきて、街ができて、ビルができました。人間の強さでつくった街だなという感じ。広島に住む人間として、戦争を知らないのに「戦争は駄目」と言ってもリアルさがない。悲惨さだけでなく、広島市民の強さや優しさをもっと発信できる、未来感あふれる施設を造りたかった。

 ―事業の多角化を今後どう進めますか。

 今のグループ企業は26社あります。M&A(企業の合併・買収)で買ったり、独自で設立したり。関連会社の代表取締役は社員ばかりです。これを「広島マツダ流ダブルワーク」と呼んでいます。給料は広島マツダの営業マンでもらい、もう一つの会社の役員でもある。雇用者であり、雇用主でもあるわけです。役員を務めている会社がもうかれば、役員報酬が入るドリームを掲げています。若い人が挑戦できる会社です。ほかに「HMR」というレーシングチームも持っています。「HM」は広島マツダ、「R」はレーサーズ。「アクセル全開で進んでいくよ」「コーナーに突っ込んで挑戦するよ」という意気込みや姿勢を表しています。

 ―会長の人生プランは。

 私は36歳で社長になって46歳で社長を辞めた。今52歳。56歳で今の会長職でさえ後進に譲ろうと、もくろんでいます。私が引いて若手にチャンスを与え、経営者としてやってほしい。30代の頃から長期を見据えたゴールを設定し、多角化を進めてきたのです。

 ―学生へのメッセージをください。

 一言で言うなら、学生らしく。やりたいことを見つけることです。アルバイトをして、ためた金を全部使ってもいいから、海外も旅して、いろいろな人と出会った方がいい。社会に出たら、異業種の人と付き合うのは本当に大事。人に会うことで考え方が変わり、行動も変わります。興味があることを片っ端からやってみてください。若い人たちが考えたことを実行し、躍動する時代になれば日本も変わってくるはずです。

▽まつだ・てつや 関西大法学部卒。1993年4月から2年の神戸マツダモータース勤務を経て、95年2月から広島マツダの常勤取締役。その後、常務、専務、副社長、社長を経て2015年12月から現職。広島市東区出身。

▽広島マツダ 本社は広島市中区。1933年創業。本業の自動車ディーラー以外に、おりづるタワー運営、沖縄県などでのホテル業も手掛ける。2021年9月期の売上高は200億8500万円。従業員数587人(9月末時点)。

▽インタビューを終えて

 広島国際大5年・古川桃圭(23)

 学生時代のアルバイトや劇団での活動が、社会に出てのコミュニケーション能力として役立ったという点が心に響いた。海外に目を向け、人がやっていないことに挑戦するのは、とても楽しそうで大事なことだと実感した。今後の人生を考えていく糧にしたい。

 安田女子大4年・江木桃花(22)

 おりづるタワーの屋上に立ち、「ここから見る景色を未来に残したい」という松田会長の言葉に力強い思いを感じた。「人は人に影響されて生きていく」という言葉も印象的。私も視野を広く、いろいろなことに積極的に挑戦する社会人になろうと思う。

 広島修道大3年・藤原杏(21)

 長期的なゴールを持ち、会社にとって社会にとってどの選択が大切かを考え、次世代の人たちに挑戦する機会を創っている会長の考えに感銘を受けた。学生時代は、やりたいことに挑戦した方が良いというアドバイスを生かし、悔いのないよう挑んでいきたい。