穴掘りチャンピオンは? 強力な前足のモグラ
<2017年7月ちゅーピー子ども新聞掲載記事より>
今回は地中での能力を見てみよう。ただ、人が直接見ることができない地中なので、穴の大きさや掘るスピードを正確に測ったり、比較したりすることはとても難しくデータも少ない。また、跳躍力と同じく体の大きさとの関係や土質も考えなくてはならず、私の見聞きした「印象」とならざるを得ない。
巣を作るため穴掘りをする動物は多く、キツネやアナグマ、トビウサギなどはとても長い穴を掘る。昆虫のアリもそうだ。しかし、何といっても穴掘りの専門家といえば、一生のほとんどが地中生活で、前足を使って穴を掘るモグラやヒミズの仲間、前歯で掘るハダカデバネズミの仲間などだろう。
その中でも、モグラは前足が強力なスコップのように発達していて、長いトンネルを掘り、餌のミミズを一日に体重と同じくらい食べる。

私の近所の、舗装道路に挟まれたコンクリート張り水路の水抜き穴から出入りするモグラを見たことがある。そこは一番近いと思われるモグラの生活場所から、舗装道路や家を横切って、距離で30メートル、深さで3メートルも離れた所だが、モグラには朝飯前の穴掘り仕事だ。またアスファルト舗装と縁石の継ぎ目を押し上げてトンネルを10メートルも掘っているのも見た。
ところで、アフリカに人ほどの大きさのツチブタという、シロアリを食べる動物がいる。前足には大きな爪があって、穴掘りも得意だ。珍しい動物だが安佐動物公園が1971年に開園して間もないころに飼っていた。
ある時、動物病院に入院して、土の運動場に出したところ、いきなり穴を掘り始めた。ツチブタの大きな体が、まるで泥沼に沈むように見る見る頭から隠れていく迫力に思わず見とれてしまった。しかし、すぐにわれに返って、3分の2ほど沈んだところで、太い尾をつかんで、力いっぱい引っ張り出した。もし、あのままにしておけば、きっと掘り出すには重機が必要になったかもね。
(広島市安佐動物公園元園長・福本幸夫)