両腕を十字にして発射のしぐさ。昔なら大抵の子どもがまねたはずだ。1966~67年に全39話を放映した初代ウルトラマンの必殺技「スペシウム光線」は、それで倒した敵が実は多くない▲記憶に残るのは竜に似た怪獣ヒドラだ。トラックにひき逃げされ、死んだ少年の魂が乗り移ったのか現場の国道を襲う。激しい戦いの末に飛び去る敵を正義のヒーローはあえて見逃す。十字に組んだ腕をそっと解いて▲人にも怪獣にも優しい初代のDNAをどう継いでいるか。話題の映画「シン・ウルトラマン」を初日に見た。昔の怪獣や宇宙人が現代風にアレンジされ、日本を舞台に人類に挑戦する。オールドファンにはたまらない▲かの光線も、宇宙のエネルギーに満ちた光波熱線として描く。ただ「必殺」ともいえず強敵に通じない。ネタバレ防止で詳しくは控えるが最後に勝つのは攻撃の破壊力ではない。世界の結束、人間の知恵の結集である▲激しい交通戦争の時代ゆえの設定だったヒドラの回は、ひき逃げ犯の出頭という空想特撮らしからぬ結末に。「シン」が現代の寓話(ぐうわ)だとすると―。大量破壊兵器に満ちた世界と、殺し合う人類の姿は光の国から見てどう映るだろう。