参院選を控え、景気回復を印象付けたかった岸田政権には誤算かもしれない。

 13月期の国内総生産(GDP)の速報値は、年率に換算して実質10%減となった。2四半期ぶりのマイナス成長であり、政府が目指していた新型コロナウイルス流行前の水準に届かなかった。

 原因ははっきりしている。オミクロン株への変異もあって、コロナ感染が再び拡大したことだ。多くの地域でまん延防止等重点措置が出され、GDPの半分以上を占める個人消費が飲食や旅行などで伸び悩んだ。そこに、マイナスに作用する輸入がワクチン購入で増えた。

 46月期は好転する、との予測もある。個人消費に関しては観光や旅行の需要が大型連休を機に一定に回復した。コロナ禍を巡る状況が現在より悪化しないとすれば、消費マインドは夏にかけて高まっていこう。

 明るい兆しの一方、円安進行やロシアのウクライナ侵攻の長期化が、やはり重しになる。小麦などの食品の値上げ、エネルギー価格の高騰が家計を一段と圧迫していくと考えていい。

 企業経営に目を転じれば、円安で輸出が有利になるはずの製造業も、原材料費の増大や半導体不足などに直面している。さらに中国のコロナ禍による悪影響も懸念される。先行きが楽観できるような状況ではない。

 確かに3月期決算だけを見ると東京証券取引所の上場企業は好調さが目立つ。自動車や鉄鋼などがけん引し、最終利益はトータルで大幅に増えた。ただ経済の不透明感が残る中では大胆な設備投資や、本来なら優先すべき従業員への還元に慎重になりがちなのが現実だろう。

 賃金が上がらず、個人消費の伸び悩みをもたらす―。その負のサイクルを日本経済は抜け出せていない。ましてや中国地方の上場企業の6割近くが減益・赤字となるなど、地方経済は依然として力強さに乏しい。

 岸田政権にはこうした数々の不安要因と向き合い、景気回復をてこ入れする責任がある。

 来週、国会で審議入りする歳出総額27千億円の2022年度補正予算案はどうなのか。参院選への成果を求める連立与党の公明党などに配慮し、苦肉の策で打ち出したものだ。

 低所得の子育て世帯に対する子ども1人当たり5万円の給付など、先行支出の予備費が今回の補正で補充される。むろん助かる人も多い。だがコロナ禍を通じて繰り返された現金給付の効果を、どこまで検証したのだろう。そもそも予備費を安易に使い、ほぼ同時に埋め戻す手法は分かりにくい。

 もう一つの補正の柱が、石油元売り会社への補助金の拡充など燃料価格の抑制策だ。好業績を挙げる元売りを救済して後はお任せ、にも映る。燃料高騰に苦しむ地域の事業者など、国民に近いところにもっと直接の恩恵が及ぶ方法はなかったか。

 補正の歳出は全て赤字国債発行で賄われ、財政悪化に直結する。十分な効果が求められるはずなのに総じて小手先かつ、場当たり的な印象が拭えない。

 岸田政権は参院選の後に本格的な総合経済対策を打ち出す方向という。日本経済を確実に成長軌道に戻すためには、こうしたやり方だけでは限界があることを自覚してほしい。