働く時間や雇用形態にかかわらず、全ての働く人を会社員と同じように厚生年金と健康保険に加入させる改革である。政府の全世代型社会保障構築本部は中間整理で「勤労者皆保険」の実現を打ち出した。

 従来は厚生年金に入っていないパートやフリーランスの人たちも対象とすることで年金の受給額を手厚くし、老後の安心につなげる勤労者皆保険の方向性に異論はない。社会保障の担い手をいかに確保し持続可能な制度にしていくかは、わが国の最重要課題だからだ。

 ただ実現が可能なのか中間整理からは見えてこない。岸田文雄首相肝いりの政策ながら、具体的な制度設計や実施スケジュールに触れていないためだ。問われるのは「負担と給付」の在り方である。参院選を控え問題提起を避けたとしか思えない。

 岸田政権は、6月にまとめる政府の経済財政運営の指針「骨太方針」に中間整理を反映させる。背景にあるのは、少子高齢化の進行で現役世代人口が急減する「2040年問題」だ。

 40年には高齢者数が人口の3分の1を超える。社会保障費がかさむ一方、保険料を負担する現役世代は現在の約7500万人から約6千万人へと減少する。このままでは超高齢社会を支えきれないのは明らかだ。

 中間整理は、会社員ら雇用されている人を対象とする厚生年金と健康保険に、パートなど短時間労働者の加入を広げていく方針を明記した。

 将来受け取るのが国民年金(基礎年金)だけの人は、生活が苦しくなる恐れがあり、厚生年金に加入すれば受給額の上乗せが期待できる。育児や介護と両立するため、働き方を選択しやすくなる利点もある。

 政府は既に、支え手を増やすため70歳まで働ける機会確保を企業の努力義務としたほか、短時間労働者が加入できる企業規模要件の見直しに着手。現在の「従業員501人以上」から今年10月に「101人以上」、24年10月に「51人以上」へと段階的に引き下げる。

 中間整理はさらに踏み込み、企業規模要件の撤廃について検討を求めた。さらにフリーランスや、インターネットを通じて単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」らの加入を促す議論を提唱した。

 厚生年金は労使で保険料を折半する。厚生労働省の試算では加入制限をなくした場合、新たに125万人が適用となるが、事業主負担は年間3160億円増える。

 実現には事業主の理解が欠かせないが、中小零細企業には負担が重く反発は必至だ。新型コロナウイルス禍で打撃を受けた業界もある。経営を圧迫しては本末転倒であり、賃上げの妨げになることも避けなければならない。

 加えて、雇用関係のないフリーランスらの保険料負担を発注元企業に求めるのは無理があろう。こうした働き方の人に適用する制度の新設を求める意見も構築会議では出た。加入者が減る国民年金の将来像も課題となろう。

 負担と給付がどう推移するのか。医療・介護など社会保障全体にどんな影響が出るのか。財源は足りるのか。具体的な判断材料を国民や企業に示し、議論を深めることが不可欠だ。