中国地方で梅雨入りが目前に迫ってきた。近年は豪雨をもたらす「線状降水帯」が前線付近に発生し、土砂災害や洪水を引き起こすケースが増えている。

 61日から気象庁は、線状降水帯を発生の半日前から6時間前までの間に予報する取り組みを始める。雨の中、しかも深夜の避難となれば危険が伴う。明るいうちに予報が出れば、自治体は住民に早めの避難を促すことが可能になる。

 精度はまだ十分ではないらしく、当面は「空振り」に終わることがあるかもしれない。それでも住民は自治体から出される情報などと組み合わせながら、命を守る行動につなげたい。

 線状降水帯は積乱雲が次々と発生して連なり、数時間にわたって帯状に激しい雨を降らせる。梅雨が終わりに近づく6月下旬から7月上旬にかけては、日本列島上空に停滞する前線へ南から大量の水蒸気を含んだ暖かい空気が流れ込み、前線付近で雨雲が発達しやすいという。

 20187月の西日本豪雨や、熊本県に大きな被害をもたらした20年7月の九州豪雨でも発生が確認されている。昨年7月には静岡県熱海市で大規模な土石流災害が発生。梅雨末期の豪雨災害は5年連続となった。

 地球温暖化に伴う気候変動との関連を指摘する声もある。こうした状況を受け、政府は線状降水帯を捉える取り組みに力を入れてきた。

 気象庁は昨年6月、線状降水帯が発生したとみられる場合に「顕著な大雨に関する気象情報」を出す制度を始めた。ただ情報が出た段階では既に大雨が降り始めており、自治体や住民の対応には限界があった。

 線状降水帯の発生には海上から流れ込む水蒸気の量などが関係しているとされる。そこで民間の船舶に協力を求めて海上での観測を強化。スーパーコンピューター「富岳」も活用して半日前からの予報にこぎ着けた。一歩前進といえよう。

 当面は中国、九州北部など全国11のブロック単位で発表する。6時間前に出せなければ大雨警報などで避難を促す。

 線状降水帯の発生メカニズムや動きは未解明な点も多い。気象庁は的中させる確率を4回に1回とし、見逃す確率も3回に2回とみている。専門家によれば、14年8月の広島土砂災害のように梅雨の時季を外れ、しかも局地的な災害では予測が難しいという。

 自治体からは、ブロック単位の予報でなく「もっとエリアを絞り込んで」との声が上がる。もっともだろう。避難を呼びかける自治体は他の気象情報や被害想定と組み合わせた上で判断を迫られる。試行錯誤になるが避難行動につながる分かりやすい発信に努めてもらいたい。

 気象庁は今後、予報の範囲を24年に都道府県単位、29年には市町村単位にすることを目指している。そのためには海上、陸上とも観測態勢を強化する必要がある。運用しながら予測の精度を高めたい。

 今回の予報で、住民は少し先の行動を考えることができる。自治体は早めに避難所の開設などを進めることができる。避難準備に向けたスイッチと認識したい。たとえ線状降水帯が発生しなくても大雨に見舞われる可能性は高い。避難場所、経路を確認して備えよう。