市中心部の馬洗川で、谷川船頭長㊧から遊覧船をこぐさおの使い方を教わる谷さん

 広島県三次市の県無形民俗文化財「三次の鵜飼(うかい)」の観光遊覧船を操る船頭に、同市出身で比治山大4年の西海斗さん(22)=四拾貫町=が今季から加わった。市観光協会(現三次観光推進機構)のインターンシップに昨年参加したのがきっかけで、「幼い頃から親しんできた伝統文化を支えたい」と挑戦を決めた。

 船頭は鵜匠の舟と並走し、長さ約4メートルのさおを使って見物客の乗る全長約10メートルの木造船を動かす。練習は鵜飼乗船場(十日市町)近くの馬洗川で5月上旬に始めた。列車に2時間揺られて戻った夕方のスタート。先輩からは「さおは自分より後ろに差す」「船の動きをよく見て」と声が飛び、川面を行き来した。

 小学生の頃から家族や地域の人と遊覧船によく乗ったという西さん。地元就職を望み、同協会のインターンシップに応募した。昨年9月の約1週間、平田観光農園(上田町)や登美志山(吉舎町)の施設などを巡った。観光鵜飼いに受け入れてもらった際、船頭不足を知った。「さお1本で船を操る姿がかっこいい。何かで関わり、支えたい」との思いが膨らんだ。

 観光鵜飼いを主催する同機構によると、今季の船頭の登録者数は24人で10年前から4人減った。当時は20人ほどが月に各10~15回出ていたため、遊覧船を1日10隻用意できた。ただ近年は新型コロナウイルス禍や職場の事情で常に参加できる船頭は限られ、日に5隻前後がやっとだという。

 新人の奮闘に、谷川一行船頭長(62)は「上達してきた。ただ流れが速いので場数を踏まないと本番では通用しない。船頭によってこぎ方は違う。いろんな人から学んで」と注文する。

 西さんは授業で練習に出られない日もあるが、先輩のさおさばきを撮った動画を見てイメージトレーニングも重ねる。今季の鵜飼い開幕は1日。「教わった内容を生かし、安全第一に、多くのお客さんに楽しんでもらえる運航をしたい」とデビューを目指す。(石井千枝里)