笠岡市議会の本会議で議案を説明する小林市長(1日)

 岡山県笠岡市議会(定数20、欠員2)の議場を見渡す定員40人の傍聴席にいたのは、市議の支援者1人だけだった。定例会が始まった1日、議案説明に登壇した小林嘉文市長(61)は昨年12月、市議会として初の市長辞職勧告を決議された。議員提案の条例で、4月から1年間、給料を1割カットされた。市長と市議会のもつれた糸は絡み合い、有権者不在のまま確執が続く。

 辞職勧告の発端は「トイレ」だった。市は岡山県から引き継いだ農業施設の運営事業者を選んだ後で、トイレが合併浄化槽につながっていないと指摘を受け、あわてて改修を計画。未接続の事実を説明せず、新型コロナウイルス対策を理由に昨年3月の定例会に予算案を提案したところ、「感染症対策として不適切」として認められなかった。

 6月も予算案から削られた後、9月に未接続の事実を明かして可決を求めた。この姿勢に市議会は「議会軽視」と猛反発。強い調査権限を持つ特別委員会(百条委員会)を設け、小林市長も証人に呼んだ。

 「事件性はなく、百条委はなじまない」と小林市長は釈明する。新型コロナ禍を理由に削減された給料に関しても「一方的で相談もなく、心外だ」と主張。いずれも市議会との不和が根底にあるとみる。

 両者の冷え込んだ関係は2016年の市長選から続く。商社出身の小林市長は多くの市議が支えた当時の現職を破って初当選。市政の改革を掲げたが、公約の水道料金の値下げは市議会の承認を得られず、市指定ごみ袋の完全有料化の議案も、5度否決された。

 「是々非々での対応。反市長という言葉は違う」と妹尾博之議長(63)。緊張関係が続く小林市長との関係も「執行部と議会は『車の両輪』というよりも『アクセルとブレーキ』。しっかり監視し、否決だけでなく代案も示す。健全な議会の形だ」と言い切る。

 ただ、議会に「ブレーキ」をかけられた経験がある首長の受け止め方は異なる。中国新聞社が中国地方の市町村長を対象にしたアンケートでは、回答者92人のうち半数の46人が「政策の善しあしにかかわらず、議案に反対された」と明かした。「選挙戦をにらみ、ネガティブキャンペーンの話題づくり」(赤磐市)「反対のための反対」(島根県隠岐の島町)などの批判が連なる。

 地方自治は、選挙で選ばれた首長と議会が対等な立場で担う。議会には首長側を監視する役割があるが、感情的になれば、軋轢(あつれき)を生む。一方で近過ぎる関係はなれ合い、チェック機能が働かない。

 中国地方の市町村で最大の広島市議会(定数54、欠員3)は長年、自民党系会派が分裂し、市長に近い会派と距離を置く会派で主導権争いを続けてきた。国政と異なり、地方議会に与野党は本来ない。だが「市長与党」を自負する広島市議は言う。「議案に意見を反映させて通すのが与党の役割。善しあしは議会に出る前に確認し、市側と調整している」。その根回しの舞台は、市民から見えない。