大規模買収事件で被買収罪に問われた地方議員が買収資金を記載した収支報告書の写し

 「先生」と呼び合い、選挙時には「祈必勝」などと毛筆で大書した「ため書き」を贈り合う。政界にはさまざまな独特のルールがある。河井克行元法相(59)夫妻による大規模買収事件では、法律さえも政治家たちが都合良く解釈し、行いを正当化していた。

名ばかりの規正

 「政治とカネ」の透明性を確保するのを目的とした政治資金規正法。政治団体を通じ、政治家が選挙区内の政治家に寄付するのを認めている。領収書を交わし、互いに政治資金収支報告書に記載するのが要件だ。事件では買収目的の現金を受け取ったとして被買収罪に問われた広島県内の地方議員の一部が、その「裏金」を寄付や交付金として記載していた。

 「(買収の)趣旨が浄化されると感じていた」「記載しないと問題になると思って載せた」。夫妻の公判で証人となった地方議員たちは、買収資金と認めた上で、収支報告書に記載した理由をこう証言した。買収目的のカネでも記載すれば合法になる―。事件発覚後に領収書を克行氏側に届けたケースもあった。

 候補者すら効果を疑う選挙カーが島内を所狭しと行き交う。投票用紙はいまだに手書き。「お手盛り」がまかり通る議員報酬や政務活動費。議員への根回しにいそしむ首長…。

 選挙から議会、行政へと取材を広げる中で、法律から独特のルールまで、今の課題に対応仕切れていない地方政治の現状をみた。社会全体がもっと素朴な疑問を抱き、おかしければ、ノーを突き付けるべきではないだろうか。

声を上げて一歩

 身近な問題に引きつければ、理不尽さで注目されている「ブラック校則」が思い浮かぶ。髪形はサイドを短く刈り上げたツーブロックや三つ編みはだめで、靴下や靴の色は白に限るというのは、広島県南部の小学校の例だ。長男(8)を通わす女性(43)は入学後に初めて知り、「ママ友」と学校側に疑問を投げかけたが、答えは「華美はいけない」の一点張りだったという。「それがルールと説明されても納得できません」

 ブラック校則は、子どもや保護者が声を上げ、全国で見直しの動きがある。かたや政界では、河井夫妻の事件後も、国会議員側が政治資金規正法の手続きを踏み、選挙前に選挙区内の地方議員に資金提供するケースが相次ぎ発覚している。「法令にのっとり、適正に収支報告した」と決まり文句のように繰り返し、選挙前の資金提供を制限するような法改正の動きは見えない。

 選挙違反で当選無効になった国会議員に歳費の返還を義務付ける歳費法改正案は、15日に閉会した通常国会でみたび提案が見送られた。政界は独特のルールで動く「ムラ社会」であり続けるのだろうか。思考停止し、そこに安住する政治家に、誰も民意を託せない。

 <クリック>政治資金収支報告書 政治資金規正法に基づき、政党支部や政治家の後援会といった政治団体は、1年間の収支や保有する資産を報告書に記載し、翌年3月末までに都道府県選管か総務省に提出しなければならない。提出後、各選管や総務省は11月末までに報告書を公開する。報告書の保存期間は3年間。不記載や虚偽の記載をした場合は「5年以下の禁錮または100万円以下の罰金」などの罰則の規定がある。