「政治とカネ」の問題を与野党とも忘れてしまったのだろうか。2019年の参院選で、広島選挙区は大規模買収事件を引き起こした舞台となった。地方議員ら100人に3千万円近くを配ったとして、河井克行元法相と、自民党公認で立候補した妻の案里元広島県議は、ともに公選法違反で有罪が確定した。

 ただ、選挙前でも国会議員から地方議員へ寄付の名目でカネを提供できる構造は何ら改善されていない。政治資金の透明性を高める対策も不十分なまま。当選無効となった国会議員に歳費の返還を義務付ける歳費法改正は先送りが続く。事件の教訓を生かしておらず、金権政治を放置しているのに等しい。

 序盤戦を見る限り、政治とカネの議論が低調過ぎる。安倍、菅政権の時から問題が続発し、国民の不信は拭えていない。

 今回の広島選挙区で戦う自民党候補の陣営は「買収事件がまだ尾を引いている」と逆風を口にする。有権者が納得していないのは当然だろう。3年前、党本部は案里氏の陣営に破格の選挙資金1億5千万円を投入した。誰の判断か経緯が明らかでなく、河井夫妻の買収資金に使われたのではないかとの疑念もくすぶったまま。再調査せずに再発防止などできるだろうか。

 公選法は政治家に対して選挙区内での寄付を禁じているが、政治団体や政党、政党支部への寄付は例外として認めている。このルートを使えば、国会議員が自らの選挙運動に加勢する地方議員にカネを流すことができる。買収の意図があっても党勢拡大のためなどと言い繕える問題点を、大規模買収事件は改めて示したと言えよう。にもかかわらず、国会で政治資金規正法や公選法見直しの議論はほとんどなかった。

 自民党の政党支部や政治団体を行き交う寄付への疑念は、広島に限らない。京都府連では国会議員から集めたカネを府議らに配り、奈良県では奈良選挙区の参院議員の政党支部が県議側に寄付していた。いずれも国政選挙前の時期である。国会議員は「規正法に従い適法」「党勢拡大のため」と正当化した。これでは国民の不信は解消されず、むしろ高まる一方だ。

 与野党とも、自らの襟を正す努力を十分に尽くしているだろうか。最たる甘い例が歳費法の改正だ。3度の国会を経ながら実現できていない。肝心の与党は、改正案の骨子をまとめたのに提案すらせず、その理由も十分には説明していない。

 月100万円の文書通信交通滞在費(現調査研究広報滞在費)の見直しも腰砕けだ。日割り支給への変更にとどめた挙げ句、使い道を広げた。あきれ返るほかない。使途の公開を義務付け、使わなかった分を返納させる改革は待ったなしだ。

 大規模買収事件は、特異な議員が引き起こしたと、問題の本質から目をそらそうとしているように見える。安倍政権の大臣経験者は他に2人、政治とカネの事件を起こした。元農相は鶏卵業者から現金を受け取って収賄罪が確定し、元経済産業相は選挙区内でカネを配って公選法違反の罪で略式命令を受けた。

 「政治とカネ」問題への対策が不十分なままでは、新たな事件の発生は防げない。与野党は抜本的な防止策を講じ、自浄能力を示さなければならない。