食料品やガソリン、電気料金などの値上がりが続いている。資源価格の高騰に円安も加わった物価高は先行きが見通せず、窮地を乗り越えるには大幅な賃上げが求められる状況だ。

 参院選では与野党とも政策の柱に位置付ける。最低賃金の引き上げをはじめ、賃上げ促進税制の拡充、人材育成への補助などが重視されている。

 だが公約を見ると、目標やその達成時期が明示されていないものが目立つのはなぜだろう。求められているのは賃上げを進め、消費拡大につながる「経済の好循環」を実現することだ。

 日本はこの30年間、賃金がほぼ増えていない。思い切った政策を講じなくては持続的な賃上げなどかなうはずもない。与野党にはもっと踏み込んだ議論を求めたい。

 ほとんどの党が挙げるのが全国平均で930円にとどまる最低賃金の引き上げだ。

 公明党は「2020年代前半には千円超」を、立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組は1500円、国民民主党は1150円以上をうたう。日本維新の会は直接は触れていない。

 自民党は今回、最低賃金増には言及したが、3年前や6年前に掲げた千円の目標は盛り込まなかった。時期も「できるだけ早く」という表現にとどめている。23年度に達成を見込んだ安倍、菅両政権の取り組みよりも後退した感は否めない。

 野党も時期には踏み込めていない。最低賃金引き上げが必要と認識しながら、与野党とも現実的なアプローチが置いてきぼりになっていないか。これでは公約ではなく、ただの願望としか言いようがない。

 賃金引き上げをコストに上乗せできない零細企業もある。コスト上昇分を適切に価格転嫁できるような十分な政策誘導も含め、もっと論じるべきだ。

 国内だけの問題ではない。ドルベースで見れば、1ドル135円台の現在よりも、最低賃金が823円ながら1ドル110円前後だった6年前の方が高い。ドイツは10月から最低賃金を1割以上引き上げ、12ユーロ(約1700円)とする。日本の賃金が相対的に下がれば人口減少で不足する労働力を外国人で補うことが難しくなる。

 自公がうたう補助金拡充も安倍政権から続く施策の焼き直しに過ぎない。安倍政権は好業績の企業に賃上げを期待したが、内部留保の拡大ばかりが目立った。自民党は今回「25年ぶりの本格的な賃金増時代を創る」とぶち上げた。だが安倍政権をなぞるような政策で賃上げがどこまで実現できるだろうか。

 職業訓練などで働き手の能力を高める人材育成の予算も今後3年間で4千億円では心もとない。岸田政権による石油元売り会社へのガソリン補助金は2兆円近い。もっと人材育成への支援を手厚くするべきだ。「人への投資」が、政権の目指す「新しい資本主義」の柱の一つだったはずだ。

 賃上げが労働コストを重くすることは避けられない。だが労働コストを削って収益を確保する手法が今の日本経済の低迷を招いたとも言えよう。社会変革をもたらすような賃上げ政策の転換を成し遂げ、経済の持続的成長力を高めることが必要だ。各党が論じるべきはその具体策である。