「中高年層にも高度な学習機会を提供することが大学の果たすべき使命である」そう語るのは、広島大の杉原俊彦入試センター室長である。

 50~60歳以上の中高年層を対象に、大学でもう一度学ぶ機会を提供する同大の「フェニックス入学制度」。学ぶ目的や意欲を重視するAO選抜方式を利用した入学制度で、2001年度入試から導入した。国立大学では初めて。

 今までに25人が卒業し、現在は32人が在籍している。従来の公開講座とは全く違い、一般の学生と同じ授業を受ける。最終的に学士号の取得も可能だ。

 現在、文学部2年の萩原哲さん(64)。長女が同大に入学した際、偶然この制度を知り、「ドイツ語が堪能になり、大好きなヘッセの本を原書で読みたい」と入学した。毎日図書館に通うほど勉強熱心だ。「大学では専門以外の一般教養も学べて楽しい。苦手なパソコンは『師匠』と呼ぶ、40歳以上年の離れた同じ学部の友人に教わっている。若い子たちには元気をもらっている」と笑顔で語る。

 大学院文学研究科修士課程1年の播磨チヅ子さん(64)。定年退職後、新聞でアフリカ・マリの子どもたちの現状に衝撃を受けた。村に先生を雇うお金が無いため教育を受けられない子どもたちに何かしたいと思い、入学後はマリの公用語、フランス語を専攻。

 「大学はやろうと思えば何でもできる場所」と話し、いつか現地を訪れるという夢もある。毎朝5時に起床し、子どもの弁当を作ってから登校する彼女の言葉には説得力がある。

 経験豊富な級友の言葉は、夢や学ぶ楽しさを忘れがちな私達若者の背中も押してくれる。大学にとっても周りの学生にとっても、彼らの存在は大きい。来月7日には来年度入学者のための説明会が東千田キャンパスで行われる。高い志を持つ者同士が世代を超えて互いに高めあえる、そんな機会が大学内に更に増えることに期待したい。 (2年高松方子、安部大地)