広島トヨペット(広島市西区)は、トヨタ自動車の新車販売やメンテナンスのほか、車を売らないショールームの開設など、新しい取り組みにも力を入れている。新しい価値の創造に挑む古谷英明社長(46)に、学生時代の学びや会社運営の考え、学生へのアドバイスを聞いた。

(聞き手は県立広島大・藤本涼子、県立広島大・殿畑萌恵、広島工業大・中村玲孔(れく))

 ―学生時代、どんなことに力を入れていましたか。

 中学、高校、大学とずっと音楽です。プロのロックスターになりたくてバンドをやっていました。あの頃はバンドブーム。憧れは奥田民生さんのユニコーンでしたが、勉強するうちビートルズなど洋楽を聴くようになり、のめり込みました。

 ―学生時代の経験は今の仕事に役立っていますか。

 バンドは1人じゃできません。息を合わせてタイミングを見計らいます。楽器で会話する感じ。社会では1人でする仕事は限られていて、チームで一つのことを成し遂げていきます。チームワークを醸し出すという面で役立っています。

 ―会社もバンドみたいな雰囲気ということですか。

 いろんな部署の人が協力し、1台の車をお客さまに販売して喜んでもらい、生活を豊かにしていただく。それに向け、チームで音を奏でていくと考えれば、そうかもしれません。

 ―社長への道のりは。

 会社は曽祖父が1938年に創業しました。祖父、父と続き、父が2015年に71歳で突然死去して、社長になりました。大学を卒業する頃、自分の音楽に対する限界が見えていて、家業を継ぐことにしました。入ってからの修業は大変でした。エアコンメーカーでの営業を体験して入社。他県のトヨペットで販売やサービスを経験し、トヨタの本社で改善や販売販促といったメーカーの仕事も勉強しました。カナダのトヨタディーラーでも2年間、働きました。

 ―日本とカナダのディーラーの違いは。

 大きく違うのは法律。日本は、お客さまの家を訪問して地道な営業をするが、米国やカナダは訪問販売禁止です。ただ、どちらも、トップセールスはお客さまと仲良くなってネットワークを持っている点は共通しています。「あの人、いいよ」と口コミでファンを広げていくのです。

 ―会社の特徴を教えてください。

 2016年、中区東千田町に車を売らないショールーム「CLiP HIROSHIMA(クリップ・ヒロシマ)」を設けました。イベントをしたり、カフェで食事をしたり。誰でも使えます。車の販売や修理だけでなく、広島に関わる人たちに新しい価値を提供できる会社に変わっていこうという思い。そのスローガンが19年に掲げた「HIROSHIMA+」です。東千田町に続く2号店として19年2月、リニューアルした廿日市店にカフェを併設しました。

 ―他にも新しい取り組みはありますか。

 広島を楽しみ尽くす企業になるということです。車による移動を楽しんでもらうため、カーシェアリングや残価設定クレジットなど車に乗ってもらいやすい環境を整えています。行く目的地も用意しています。宮島口にある社員用の研修センターを建て替え、23年5月には研修所兼宿泊施設ができます。西区の大芝公園交通ランドのネーミングライツも取得し、「広島トヨペット交通公園」になりました。ゴーカートなどを通じ、将来の車ファンを増やしていきたい。自社で16年にレーシングチームを設立し、レースにも参戦。私も当時、ドライバーとしてハンドルを握りました。

 ―学生へのアドバイスをいただけますか。

 自分の好きなこと、やりたいことをとことんやってみてください。学生時代、お金はなくても時間はあると思います。失敗しても構いません。「やりたいことが見つからない」と重く考えず、気になったことから後悔しないよう挑戦してみてください。

▽ふるたに・ひであき 日本大経済学部卒。エアコンメーカー勤務を経て2002年に入社。取締役総務部長、常務取締役管理本部長などを経て、15年8月から現職。広島市西区出身。

▽広島トヨペット 本社は広島市西区。1938年創業。広島県内に35店舗を構えている。2021年3月期の売上高は390億円。従業員数は708人(10月末現在)。

▽インタビューを終えて

 県立広島大2年 藤本涼子(20)

 自動車販売に加え、レーシングチーム運営やカフェ経営など、さまざまな分野での活躍が印象に残った。「自分の好きなことをとことんやる」というアドバイスが心に残っている。多くの経験を通して自分が夢中になれることを見つけていきたい。

 県立広島大1年 殿畑萌恵(18)

 気軽に食事やカフェを楽しめる場を設けるなど、広島に住む人たちとのつながりを大事にしている会社だと感じた。特に印象に残ったのは「自分が好きなことをとことんする」という社長の言葉。やりたいことを見つけ、失敗を恐れずに挑戦する大切さが分かった。

 広島工業大1年 中村玲孔(19)

 人とのつながりの大切さを実感した。また、やりたいことを見つけることで目標が生まれ、同じ目標へ進む仲間が見つかっていくのだと教わった。目標が同じ仲間を増やすためにも、曖昧にしてきた自分のやりたいことをまず見つけようと思う。