広島県が広島市と福山市の従業員10人以上の全事業所を対象に無料のPCR検査をするのを受け、両市内の企業が対応を進めている。受検対象を全従業員としたり希望者に絞ったりと協力する姿勢はさまざま。感染拡大の防止に役立つと受け止める企業がある一方、多くの陽性者が出た場合の事業継続を懸念する声も上がっている。

 地場流通大手イズミ(東区)は、両市内のグループ32店や総菜工場などの全従業員が基本的に検査を受ける。ふりかけ製造の三島食品(中区)は13日、本社や工場などで働く約250人を検査する。「無症状者が感染を広げるのを防ぐため協力したい」と説明する。

 保育所運営などのアイグランホールディングス(西区)は広島市内の直営施設の約300人分の検査を予定。自社で全従業員に毎月検査をしており「負担が減るのは助かる」とする。陰性なのに自社の検査で陽性と判断される「偽陽性」が昨年12月から4件あった。「結局、病院で検査しないと分からないので時間がかかる」と指摘する。

 陽性者が出た際に備える企業もある。ひろぎんホールディングス(中区)は全従業員を部署ごとにグループ分けし、日程を変えて受検。業務への支障を抑える。広島信用金庫(同)も交代要員を準備している。

 中国電力や紳士服販売の青山商事(福山市)、医療機器製造のJMS(中区)は対象を希望者に限定。もみじ銀行(同)は、全員とするか希望者だけにするかを調整している。

 企業側には心配もある。陽性者や濃厚接触者は無症状でも出勤できなくなると想定。広島市内の中小メーカーの社長は「全員で検査を受ける予定だが、陽性者が出たら全社的に出勤停止になる可能性がある。工場はテレワークも難しい」と複雑な表情を浮かべる。福山市の製造業の担当者も「勤務シフトが組めず納期が遅れるのが怖い」と打ち明ける。

 PCR検査は感染力がなくなった段階でも陽性になることもある。ある流通業の社長は「従業員のマスク着用や消毒を徹底している。検査が必要か見極めたい」と様子見の姿勢。社内に抗原検査キットを備えるメーカーは「一斉検査を受ける予定はない」とする。