「オットーさんの思いを若い世代に伝えていきたい」と話す大塚さん

 第2次世界大戦中のナチス・ドイツのユダヤ人虐殺を伝える福山市御幸町のホロコースト記念館の立ち上げに奔走した大塚信さん(72)が今年、館長を退いた。「アンネの日記」の作者アンネ・フランクの父オットーさんとの出会いから50年の節目に決断。「平和教育への情熱は増すばかり。今後は後進の育成に力を入れる」と意気込む。

 同館は1995年、国内初のホロコーストの教育施設として開館した。牧師の大塚さんが所属する聖イエス会(京都市右京区)の信者たちに寄付を呼び掛けて実現した。収容所で着られた服やガス室で犠牲になった子どもの靴など60カ国から寄せられた遺品や資料約1500点を所蔵する。

 開館のきっかけは71年、大塚さんとオットーさんとの偶然の出会いだった。「私の娘が書いた日記をご存じですか」。大塚さんが合唱団の演奏旅行で訪れたイスラエルで声を掛けられた。ホロコーストから家族でただ一人生き残ったオットーさんの優しいまなざしや謙虚な姿勢に心を動かされ「何かしたい」と思うようになった。

 その後もスイスで2度面会し「犠牲になった子どもたちに同情するだけではなく、平和のために何かする人になって」と告げられた。「最後に会って握手した時、バトンを受け取った気がした」と振り返る。