
記事一覧
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花の雨 (2015/5/1)
今年の4月から、早稲田大文学学術院の客員教授として教壇に立つことになった。短歌を中心とした短詩型の歴史と表現方法や、小説の実作指導などの授業を行っていく予定である。 私が学生だった、昭和時代の早…
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春に想う (2015/4/9)
東日本大震災から4年の月日がたった。また今年は、阪神大震災、そして地下鉄サリン事件から20年にあたる。これらの忘れ難い出来事は1月から3月にかけて起こった。春という芽吹きの季節は、命についてより深…
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水をめぐる心 (2015/3/6)
年明けすぐに降った雪がまだ残る、京都の貴船神社を訪ねた。出町柳から叡山電鉄に乗って30分ほど揺られて到着する貴船口から、さらに30分ほどかけて歩いていったところにある。この神社は、神武天皇の母親の…
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空が美しいだけで (2015/2/4)
2015年の年越しは、東京の自宅でのんびりと過ごした。家族とお祝いのお屠蘇(とそ)を交わし、お節料理の朝食を食べたあと、初詣に出かけた。 お正月は、さすがにあらゆる会社が休んでいて、街はとても静…
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祈りの色 (2014/12/29)
先月末、京都を訪ねた。ちょうど紅葉のさかりで、うつくしい色を重ねる木々にすっかり魅了されてしまった。嵯峨野にある二尊院では、参道の坂と階段の両脇の楓(かえで)の赤やオレンジや黄色の葉が、降雨の後の…
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連なり、生まれる (2014/11/28)
先日、静岡県三島市に連泊し、「しずおか連詩の会」に参加した。「連詩」というのは、詩人の大岡信さんが提唱した詩の形式で、短い詩をリレー形式で連ねて作成する、複数の作者による詩作品のことである。大岡さ…
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馬駆ける町 (2014/11/8)
先日、生まれて初めて競馬場へ行った。東京都の府中市にある東京競馬場である。芝生の敷き詰められた広い競技場に、爽やかな秋の風が吹き抜ける。まわりには、バラ園や、子どもが楽しめる遊技場があり、観覧席の…
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手乗りの小鳥 (2014/10/1)
高校生のときに、白文鳥をしばらく飼っていたことがある。叔母が飼っていた白文鳥を、里帰り出産をする際にわが家で預かることになったのである。そのまま、生まれた子どもが幼稚園に行くようになるころまで預か…
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三陸海岸の船と鉄道 (2014/8/29)
浄土ケ浜、という名前に以前から魅(ひ)かれていた。「浄土」という言葉のつく場所とは、どんなところなんだろう。想像は膨らむばかりである。この浜の近くに龍泉洞という名の、地底湖をたたえる湖があることも…
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鳩と夏の花 (2014/7/28)
近所の公園を散歩していると、雉鳩(きじばと)が向かい合って身体を伏せていた。2羽とも片方の羽を少し浮かせて広げている。おそらく番(つがい)なのだろう。まだ梅雨は明けておらず、真夏ほどではないが十分…