
記事一覧
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時をこえる灯 (2017/10/31)
10月の初日に、「広島県歌人協会」の秋の短歌大会の講師として広島を訪ねた。この連載をまとめた「七つ空、二つ水」(キノブックス)の記念イベントのために、約2年前に訪ねて以来である。 秋晴れの気持ち…
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路地裏の噺 (2017/9/29)
東京・神田のオフィスビルが立ち並ぶ大通りから少し奥に入った通りに、「連雀亭」と呼ばれる二ツ目の落語家・講談師専用の小さな寄席がある。客席40席ほどのこぢんまりした空間。高座がとても近く、噺(はなし…
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船が運ぶもの (2017/8/30)
日本から見て外国に当たる地を「海外」と呼ぶが、改めて考えると島国ならではの表現だな、と思う。今のように飛行機が発達していなかった頃、海外へ行くには船を使って何日も航海する必要があった。天候の不安定…
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徳島の海と椅子とレンガ (2017/7/28)
7月のはじめに、徳島県歌人クラブの夏の大会のゲストとして招かれ、久しぶりに徳島を訪ねた。 かつて私の所属する歌誌「かばん」のメンバーで、17年前に徳島で短歌合宿をしたことがある。徳島出身の歌人、…
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再生アパートに歌を (2017/6/28)
福岡市中心部の川沿いの一角に、冷泉荘と呼ばれる場所がある。昭和30年代に住居用に建てられたアパートだが、2000年代に入ってからリノベーションされ、現在はさまざまな店舗として利用されている。かつて…
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海の学校 (2017/5/30)
連休を利用して久しぶりに仙台を訪ねた。明るい光を浴びながら、6年前の東日本大震災で壊滅的な被害を受けた荒浜へ足を延ばした。 今も更地のままとなっている中に、ぽつんと建つ4階建ての四角い建物が目を…
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こぼれゆく花 (2017/5/1)
4月の大学は、入学したて、進級したての学生の前向きな空気が満ちていてにぎやかである。そのにぎやかさを、春の花々がかきたてる。中でもやはり、桜は特別な花だと思う。 今授業で使っている大教室の一番後…
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半島の生と死 (2017/4/3)
福岡県の西にある半島、糸島地方を舞台にした小説「いとの森の家」(ポプラ社)をきっかけに、一昨年末より「糸島観光大使」をつとめている。今月、福岡市内で行われた短歌のイベントにからめて、若手歌人7人を…
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美しい暮し (2017/2/27)
子どもの頃、学習系の雑誌と少女漫画誌を毎月1冊ずつ買って読んでいた。それらの本を隅々まで読みつつも、親が買ってきた雑誌を読むのも好きだった。父の買ってくる週刊誌は怖すぎるので、母の雑誌をよく読んで…
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信念と悲しみ (2017/1/30)
2017年が始まったその日、映画「この世界の片隅に」を家族で観(み)た。こうの史代の同名漫画を原作にしたもので、戦時下の呉に嫁いだ若い女性、すずの目を通じてその時代の生活が淡々と描かれ、生きるとい…