
記事一覧
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心踊る法王の街 (2018/8/31)
7月末、短歌の友人たちとフランスを訪ねた。主に、初めて訪ねる南仏を巡った。今年の日本の夏は連日猛暑が続いたが、フランスもかなり暑かった。クーラーを設置していない店も多いので、夏といっても普段はこれ…
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墓と文字 (2018/7/30)
なぜ夏は、魂が戻ってくる季節なのだろう。猛暑が続く中、ふとそんなことを思う。あまりに暑いと、身体も頭もうまく動かない。畳の上に寝転がって昼寝でもするのが一番だ、と思ってしまう。 一年に一度、魂は…
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紫陽花とハブラシ (2018/6/28)
これまでいろいろな街に転居しながら生きてきたが、どの街にも夏が始まる少し前に、紫陽花(あじさい)が咲いた。紫陽花の、花に見える部分は本当は花ではなく、萼(がく)なのだということを教えてもらったのは…
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オキナグサの咲く庭に (2018/5/31)
オキナグサと呼ばれる野草を、歌人の斎藤茂吉の生家の庭で初めて見た。白くて長い綿毛がのびる独特の形が翁(おきな)=おじいさんに似ていることから、その名がついた。白い髭(ひげ)を生やした姿のイメージが強…
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つつじの功労 (2018/4/27)
この春、東京の仕事場を、文京区の千駄木という街に移転した。このあたりは「谷根千」と呼ばれる。谷中と根津、そして千駄木の地名から頭漢字を一つずつ取ってつけられた名前である。「谷根千(地域雑誌 谷中・…
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詩人のりんご (2018/4/5)
何メートルもある巨大なパネルに、つやつやした赤いりんごが一つ、ぽつりと設置してある。パネルには一面文字が書かれていて、「りんご」という言葉がちりばめられている。 ≪紅いということはできない、色では…
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カルデラの中の街 (2018/2/28)
熊本県にある阿蘇山を訪ねた。この山には、世界でも最大級のカルデラがあり、その中に5万人もの人が住んでいる。子どものころ、家族で遊びに行ったことがあるのだが、馬のいる草原(草千里)に行っただけだった…
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雪とこころ (2018/1/29)
東京に、4年ぶりに大雪が降った。朝から重たげな雲に覆われていたのだが、午前中から少しずつ降り出し、午後には吹雪となり、みるみる積もりはじめた。大雪警報が発令されたため、早めに授業を切り上げて生徒を…
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痕跡にト書き (2017/12/22)
東京という街は、いつもどこかが工事中である。30年前に大阪からやってきた時もそう思ったが、ここ数年は、オリンピック開催の影響なのか、工事現場を見かける頻度が増している。 工事のための覆いが取り払…
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生まれ落ちる時を (2017/11/28)
とある晴れた休日、そうだ、国会議事堂に行ってみよう、と思い立った。東京・千代田区をテーマにした短歌連作を作ってほしいという依頼があったからだ。短歌の商業誌である「短歌研究」という雑誌からの依頼なの…