趣味・食・遊ぶ

言ノ葉ノ箱
歌人、作家として活動する東さんが短歌を通じて綴るエッセー。1963年、広島県安佐町(現広島市安佐北区)生まれ。96年、第7回歌壇賞受賞。歌集に『春原さんのリコーダー』『青卵』(ともに本阿弥書店)、小説『長崎くんの指』(マガジンハウス)、『とりつくしま』(筑摩書房)、『ゆずゆずり』(集英社)、『薬屋のタバサ』(新潮社)、『らいほうさんの場所』(文藝春秋)、『甘い水』(リトルモア)、絵本『あめ ぽぽぽ』『ほわほわさくら』(ともにくもん出版)、エッセー集『今日のビタミン*短歌添え*』(本阿弥書店)、詩歌集『回転ドアは、順番に』(穂村弘と共著/ちくま文庫)、などがある。「言ノ葉ノ箱」ではカメラ撮影にも挑んでいます。

記事一覧

  • 空が美しいだけで (2015/2/4) 

     2015年の年越しは、東京の自宅でのんびりと過ごした。家族とお祝いのお屠蘇(とそ)を交わし、お節料理の朝食を食べたあと、初詣に出かけた。  お正月は、さすがにあらゆる会社が休んでいて、街はとても静…

  • 祈りの色 (2014/12/29) 

     先月末、京都を訪ねた。ちょうど紅葉のさかりで、うつくしい色を重ねる木々にすっかり魅了されてしまった。嵯峨野にある二尊院では、参道の坂と階段の両脇の楓(かえで)の赤やオレンジや黄色の葉が、降雨の後の…

  • 連なり、生まれる (2014/11/28) 

     先日、静岡県三島市に連泊し、「しずおか連詩の会」に参加した。「連詩」というのは、詩人の大岡信さんが提唱した詩の形式で、短い詩をリレー形式で連ねて作成する、複数の作者による詩作品のことである。大岡さ…

  • 馬駆ける町 (2014/11/8) 

     先日、生まれて初めて競馬場へ行った。東京都の府中市にある東京競馬場である。芝生の敷き詰められた広い競技場に、爽やかな秋の風が吹き抜ける。まわりには、バラ園や、子どもが楽しめる遊技場があり、観覧席の…

  • 手乗りの小鳥 (2014/10/1) 

     高校生のときに、白文鳥をしばらく飼っていたことがある。叔母が飼っていた白文鳥を、里帰り出産をする際にわが家で預かることになったのである。そのまま、生まれた子どもが幼稚園に行くようになるころまで預か…

  • 三陸海岸の船と鉄道 (2014/8/29) 

     浄土ケ浜、という名前に以前から魅(ひ)かれていた。「浄土」という言葉のつく場所とは、どんなところなんだろう。想像は膨らむばかりである。この浜の近くに龍泉洞という名の、地底湖をたたえる湖があることも…

  • 鳩と夏の花 (2014/7/28) 

     近所の公園を散歩していると、雉鳩(きじばと)が向かい合って身体を伏せていた。2羽とも片方の羽を少し浮かせて広げている。おそらく番(つがい)なのだろう。まだ梅雨は明けておらず、真夏ほどではないが十分…

  • 水と陸の間を生きる (2014/6/24) 

     北海道旭川市に講演に行った折、旭山動物園に立ち寄った。この日の旭川は、6月上旬にもかかわらず真夏のような日差しが降り注ぎ、日中は30度をゆうに超えた。ただし、同じ30度超えでも、本州に比べて、湿気…

  • 鉱山の町 (2014/5/27) 

     子どもの頃に住んでいた団地の裏の塀の向こう側に、洋館があった。塀をよじのぼって眺めると、広い庭には草が生い茂り、ゆがんだ窓枠の隙間から暗い室内が見えた。子どもたちはみなその洋館のことを「おばけ屋敷…

  • 京都の桜 (2014/5/2) 

     4月のはじめ、桜の咲きほこる京都に出掛けた。あいにく「花冷え」の言葉通り、冬に逆戻りしたようなひんやりした風が吹き、空からはぱらぱらとつめたい小糠(こぬか)雨が降ってきたが、やさしい色の花々は不満…