受け継がれる「三四郎」
2021/4/2
1992年バルセロナ五輪柔道男子71キロ級金メダリストで、「平成の三四郎」と呼ばれた古賀稔彦さんが3月24日に亡くなった。53歳での早過ぎる死に言葉を失った。それとともに、現役時代の勇姿がよみがえってくる。
バルセロナの激闘は語り草となっている。現地での練習中に靱帯(じんたい)を損傷。痛み止めを打ちながらも執念で戦い抜き、頂点に立った。また古賀さんといえば一本背負い。相手を高々とかつぎ上げる投げは、豪快かつ美しさもあり、芸術的といわれた。
強く、美しく。古賀さんが実践してきたスタイルを引き継ぐ、一人の柔道家が思い浮かぶ。2016年リオデジャネイロ五輪男子73キロ級金メダリストで、東京五輪代表の大野将平(旭化成、山口市出身)だ。
古賀さんが金メダルを獲得した92年生まれ。古賀さんと同じ柔道私塾「講道学舎」に中学から通った。大野を何度か取材したことがあるが「しっかりと組んで、投げて一本を奪う。日本の美しい柔道を見せたい」といつも話していた。ポイント重視の傾向が強い現代の柔道界で、日本伝統の「一本」で勝つ柔道にこだわり続ける。二人に共通した部分は多いと感じる。
大野は古賀さんの訃報に「三四郎と呼ばれる柔道家を目指す決心をした」とコメントした。東京五輪は「令和の三四郎」襲名の場となるか。
(下手義樹)
あなたにおすすめの記事
記事一覧
- 救世主となるか(2021/4/19)
- 2年続けて晴れ舞台が失われるのか(2021/4/18)
- 新風(2021/4/17)
- 「エリートリーグ」は必要か(2021/4/16)
- 東京五輪開幕まで100日(2021/4/15)
- マスターズV 松山の頂に挑む金谷(2021/4/14)
- コロナ禍のジレンマ(2021/4/11)
- 「記録訂正の必要なし」の決定について考える(2021/4/10)
- 無敗(2021/4/9)
- 攻めの守り(2021/4/8)