運動部デスク日誌

「田中広輔」という戦力をどう考えるか

2021/4/22

 「田中広輔を使い続けるべきか、それとも外すべきか」。広島東洋カープがこの難題に向き合うのも、今年で3年連続3度目となる。一昨年は、打率2割前後でも使い続け、8月に右膝の手術で抹消。昨年も打撃不振に陥る中、打順を下げ、最後まで完走させた。そして、今年も22試合を終え、打率は2割を大きく割り込んでいる。
 実績、貢献度が高いベテランをどう扱うか。その難しさを過去に聞いたことがある。1986年。22年目のシーズンを迎えていた衣笠祥雄は極度の打撃不振に陥っていた。主力の不振はチームの戦いに影を落とす。8月、打率が2割を切った翌日、当時の阿南準郎監督は覚悟を決めた。7年ぶりに衣笠を先発から外した。
 「一つの采配、判断で、あのときほど悩み、緊張したことはない」と振り返っていたのを思い出す。当時、衣笠は連続試合出場の世界記録まで87試合に迫っていた。チームだけでなく、球界の「大看板」を先発から外す。現場を預かる者として、その決断がどれほど重いものか、われわれは知るよしもない。国民栄誉賞の衣笠と比較はできないが、「3連覇を支えたリードオフマン」も簡単に外せるような看板ではないということだろう。
 阿南監督が衣笠を先発から外したのは1試合だけだった。「最初から決めていた。記録のために使っているのではない。そのメッセージが本人とチーム全体に伝われば、それでよかった」。大切にすべきは、チームが一丸となって進んでいくこと。その視点を踏まえた上で、首脳陣はこの難題の答えを探さなければならない。
(小西晶)


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