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2021ひろしまフラワーフェスティバル(関連ニュース・話題)

妻が愛した庭、感謝で満たす 西区の岸本さん【花の力】

2021/4/25
智子さんから手入れを引き継いだ庭で、花々に温かなまなざしを向ける正雄さん

智子さんから手入れを引き継いだ庭で、花々に温かなまなざしを向ける正雄さん

 ▽毎日手入れ 墓にも手向け

 庭の手入れと墓参りが日課になって、もうすぐ2年になる。広島市西区の岸本正雄さん(85)は、自宅の庭で鮮やかに咲く黄や紫、白の花に温かなまなざしを向けた。「この花は何じゃったかいな」

 実は、花の名前も、育て方もあまり知らない。それでも日々庭いじりを続け、自宅に花を欠かさない。

 庭に愛情を注いでいた妻の智子さんが80歳で亡くなったのはおととし6月。庭の手入れを引き継ぎ、自宅近くの墓には雨でも足を運ぶ。手向けた花が弱れば、智子さんが好んだ花を足す。

 パンジーやアジサイ、キク…。庭を彩る、四季折々の花の風景が仏壇から見えるようにと、日中は障子を開ける。花が傷みやすい夏は墓の花立てに氷を入れる。正雄さんがそこまでするのは60年連れ添った智子さんへの感謝からだ。

 25年前、工場長を最後に牛乳製造会社を定年退職した。それまで家のことは任せきりの仕事一筋。急に手持ち無沙汰になった。そんな日々を変えてくれたのが智子さんだった。「行け、行けと言われて、グラウンドゴルフやカラオケ、書道も始めたんよ」と振り返る。教室や愛好家が集う場は、智子さんが聞き回って見つけてくれた。グラウンドゴルフは広島県代表になるなど、どれも欠かせない楽しみとなった。友人もたくさんできた。「だから花は切らしちゃいけん」

 妻が亡くなり、当たり前のように行き届いていた家の掃除などを自分でこなすうち、その存在の大きさにあらためて気付いた。そして季節の花々は、夫婦で過ごした日々を思い出させてくれた。「草を抜こうとしたら妻に怒られたんよ。『これからきれいな花が咲くのに』って」

 1月、ホームセンターで買った苗を植えた。店員に花の名前は聞かないまま「6月に咲くものを」と求めた。三回忌の法要を営む初夏、その開花を見届けた時、妻への言葉を添えるつもりだ。「ありがとう」(山崎雄一)

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