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2021ひろしまフラワーフェスティバル(関連ニュース・話題)

ピンクの濃淡、命の重み刻む 東広島の村岡さん 闘病・友の死…心の支え【花の力】

2021/5/3
「病気のことを忘れさせてくれる」。今は新緑に包まれる桜に手を添える村岡さん

「病気のことを忘れさせてくれる」。今は新緑に包まれる桜に手を添える村岡さん

 ことしも2度、自宅そばのベニシダレザクラは見事に咲き誇った。「私には特別な桜なのよ」。東広島市黒瀬町の村岡みどりさん(71)はほほ笑む。

 1本の根元から枝分かれして、淡いピンクの一重の花に続き、1週間ほど遅れて濃いピンクの八重の花が咲く。二つの色合いで満開になる姿を見るたび、村岡さんは力をもらってきた。

 2000年5月、卵巣がんと診断された。主治医が夫の利博さん(69)に「助かるかどうか分からない。覚悟して」と告げるほど進行していた。2度の手術と抗がん剤治療。つらい毎日を乗り越え、同年12月に退院した。友人の女性がお祝いにくれたのが、高さ50センチほどのベニシダレザクラの苗木だった。

 田んぼのあぜに植え、平穏な生活を願った。しかし病魔との闘いは続いた。リンパ浮腫、体中の水疱(すいほう)、脚の骨の壊死(えし)…。「入退院の繰り返し。自分だけなんでこんなにって思うこともあった」。今も定期的な病院通いは欠かせない。

 そんな病気続きの日々を励ますように、ベニシダレザクラは元気にすくすくと育った。接ぎ木で作った苗だったのだろうか、いつしかピンクの色合いが異なる「不思議な咲き方」をするようになった。今は高さ約5メートルにまで成長。横幅も約8メートルに広がった雄大な枝ぶりは、日頃の悲しみや苦しみを包み込んでくれた。

 苗木をくれた女性は、10年ほど前に50代半ばで亡くなった。

 「闘病中の私を桜とともに勇気づけてくれた存在。彼女のためにも生き続けたい」。年輪を重ねて太さを増し、大地から力強く伸びるベニシダレザクラ。幹にそっと触れ、命の重みをかみしめる。(石井雄一)

4月、薄いピンクと濃いピンクに咲き誇ったベニシダレザクラ

4月、薄いピンクと濃いピンクに咲き誇ったベニシダレザクラ


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