運動部デスク日誌

監督はスポークスマン

2021/5/7

 バスケットボール男子Bリーグ1部(B1)に、こんな監督がいると聞いた。報道陣への対応が横柄で、特に競技に明るくない記者は、露骨にばかにした態度を取るのだそうだ。プロスポーツ界では「あるある」な話ではあるが、正直、残念な思いがした。

 2001年、サンフレッチェ広島担当を命じられた時の話をする。カープのキャンプ地沖縄から直接サンフレのキャンプ地宮崎へ入った。かばんの中には3冊のサッカー教本をしのばせていた。オフサイドのルールも満足に知らない「サッカー素人」。J開幕まで1カ月しかない。本当にサッカーコラムを書くことができるのか、不安しかなかった。

 当時の監督は、ロシア人のヴァレリー・ニポムニシ。カメルーンをアフリカ勢初のワールドカップ(W杯)8強入りに導いた名将だった。「勉強中なので」を理由に、どれだけ素人な質問をしたことだろう。しかし、ヴァレリー監督は「私の考えを理解して書いてもらいたい」と丁寧に答えてくれた。週1回は座学の時間まで設けて、サッカーを教えてくれた。4年間サンフレ番を務め、日韓W杯も取材したが、私のサッカー記者の原点はあの人。今でも感謝しかない。

 プロクラブの監督は、スポークスマンでもある。どんな選手、スタッフよりも一番メディアの人間と接する機会が多いからだ。チームの現状や考えを誠心誠意伝える。その仕事がどれだけファン獲得に大切であるか。後発のBリーグならなおさらだろう。一人の不誠実な振る舞いが、どれだけのものを失わせるか。クラブは小さく見積もってはならない。(小西晶)


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