運動部デスク日誌

笑顔で迎えられない五輪ならば

2021/5/12

 2020年5月11日、全国で確認された新型コロナウイルス新規感染者は43人だった。政府は緊急事態宣言について、「特定警戒都道府県」以外の34県を一斉に解除する方向で調整に入った。プロスポーツも6月の開幕、再開に向け、動きだしていた。アマチュアアスリートは、1年延期された東京五輪に向け、制限された環境でトレーニングに励んでいた。

 1年後、新型コロナウイルスがこれほど猛威を振るっていようとは思いもしなかった。もうひとつ、無理もないことだが、これほど「東京五輪」から人々の心が離れてしまうとは想像もしなかった。開幕まで2カ月あまり。日に日に盛り上がりが高まるはずのこの時期に、「五輪に向けて」という情報を発信しにくい空気が漂っている。

 辛い立場にあるのはアスリートだろう。10日、テニスのイタリア国際に出場している錦織圭は「一人でも感染者が出る状況なら気が進まない。政治のこともあるが、究極的には一人も感染者が出ない時にやるべき」と発言。陸上のテスト大会に出場した陸上の新谷仁美も「中止」を求める声や動きに理解を示した。

 アスリートだけではない。5年前、私が見たリオデジャネイロ五輪は「ボランティアの祭典」でもあった。準備不足が心配された大会を成功に導いたのは、「スポーツ祭典を支える」という彼らの誇りだったろう。東京五輪の開幕を待つボランティアの皆さんは、どんな思いで今を見つめているのか。
 
 大会の主役と大会を支える人たち。彼らが笑顔で迎えられない五輪にどんな意味が見いだせるのか。複雑な思いを抱えながら、開幕への準備に追われている。
(小西晶) 


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