運動部デスク日誌

賽は投げられた

2021/6/2

 女子テニスの大坂なおみの全仏オープン棄権が大きな波紋を呼んでいる。大会前の5月27日、「これまで記者会見に参加したり見たりし、アスリートの心の健康状態が無視されていると感じていた。自分を疑うような人の前には出たくない」と記者会見に応じない意向をツイッターで表明。30日の1回戦勝利後も記者会見を拒否。大会主催者との対立が泥沼化していた。

 大坂の問題提起は、世界中のアスリートを巻き込んで議論を呼んだ。「プロである以上、会見をするのは当然。それを含めて仕事」という批判が大半。中には、「罰金を覚悟しての行動なら、尊重すべき」「彼女の訴えは理解できる」など賛同する意見もあった。

 プレーヤー、大会関係者、報道陣、ファン…。その立場によって、いろんな意見がある。ただ、一つ残念に思うのは、大坂が一方的に、ツイッターで表明したことだ。本来、訴えたい「心の問題」ではなく、「ボイコット」「拒否」という言葉ばかりが一人歩き。その結果、いらぬ対立を生んだ感は否めない。決して大坂の望んだ結果ではなかったはずだ。変革を望むなら、主催者との対話、協議を慎重に進めていくべきだったろう。

 いずれにせよ、大坂は全仏の舞台から去った。大会主催者が「これで終わり」とするなら、病気を告白してまで訴えた彼女の勇気は無駄になろう。新しい時代のアスリートとメディアの関わり方とは―。さまざまな議論が始まることを願っている。(小西晶)

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