運動部デスク日誌

山縣の3大会連続代表入りに感じる「運の力」

2021/6/26

 冷や汗をかいたのは、本人ばかりではないだろう。東京五輪代表選考会を兼ねた陸上の日本選手権。「史上最もハイレベルな争い」と注目された男子100メートルで山縣亮太(セイコー)は小池祐貴(住友電工)との競り合いを制し、3位で3大会連続の五輪代表入りを決めた。小池との差は0秒001。「(この着差は)運だと思う」という言葉は本心だったろう。

 振り返れば、山縣の競技人生は「運」に守られてきたようにも思う。どんなトップアスリートでも、体の状態や調子には波がある。山縣の場合、偶数年に活躍し、奇数年はその反動で低迷、そして偶数年に復活するというバイオリズムを刻んできた。ロンドン大会の2012年、リオデジャネイロ大会の16年と、五輪イヤーが偶数年だったからこそ、山縣は「五輪の申し子」でありえた。

 東京五輪への道のりもそうだろう。19、20年は肺気胸、足首、膝の故障などで思うように走れない時期が続いた。新型コロナウイルスの感染がなく、東京五輪が予定通り20年に行われていたとしたら、山縣に日本選手権を戦い抜けるポテンシャルはなかった。1年延期があったからこそ、3大会連続の代表入りは守られた。それは、山縣の才能と努力と不屈の精神力が引き寄せた「運」にも思える。

 リオデジャネイロ五輪代表選考会だった16年の日本選手権を思い出す。ケンブリッジ飛鳥に「0秒01」差で敗れ、2位で代表をつかんだ。百分の1、千分の1秒で分かれる明暗、そして泣き笑い。激戦を糧に大きくなる29歳は、日本開催される五輪でどんな輝きを残してくれるのか。5年前にも見た悔しそうな笑顔に、また期待が膨らんだ。(小西晶)

#東京五輪・パラ


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