運動部デスク日誌

運を生かすのも実力

2021/6/28

 多くのドラマを生んだ、東京五輪代表選考を兼ねる陸上の日本選手権が閉幕した。最終日の27日も、予想もしなかったドラマが待ち受けていた。

 男子110メートル障害決勝。注目したのは、広島工大高出身の高山峻野(ゼンリン)だ。かつての日本記録保持者で、参加標準記録も突破済み。この日本選手権で3位以内に入れば五輪代表に決まる。ただ、大会前に背中に激痛が走り、棄権も考えたという。予選通過タイムも最下位。決勝での苦戦は必至だった。

 けがも想定外だが、決勝でも想定外の事態が。フライングで2人が失格。うち1人は予選トップ通過の選手だ。五輪への最後の関門は6人でのレース。背中の痛みをこらえ、必死の形相で前に進む。ゴール前では懸命に胸を突き出した。ゴール後は立ち上がれなかった。結果は3位。4位とはわずか0秒01差。滑り込みでの五輪切符は、感動的だった。

 高山は「悪運が強いというかラッキー」と振り返っていた。ただ、訪れた運を確実に生かすことができるのも、実力の証しだろう。

 普段は控えめな性格で知られ26歳。大きな目標を口にすることもない。ただ大一番で見せた五輪への執念は、強烈な印象を残した。男子110メートル障害で優勝した泉谷駿介(順大)のタイムは今季世界3位。世界と渡り合える種目だ。1カ月後の本番。高山は目標を「予選突破」と言ったが、花火を打ち上げそうな予感も漂う。(下手義樹)

#東京五輪・パラ

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