運動部デスク日誌

木村文子 9年ぶりに五輪の舞台へ

2021/7/3

 2日にあった日本陸連の東京五輪追加代表の発表。担当記者の「入りましたよ」との声に、胸をなで下ろした。広島市出身の木村文子(エディオン)が、女子100メートル障害で2大会ぶりの代表に内定した。「よかった」という安堵と同時に、33歳の彼女がこの決定をどんな思いで受け止めたのか、が気になった。

 木村を初めて取材したのは2011年の全日本実業団選手権。14年に五輪担当となってからは、リオデジャネイロ大会を目指す歩みを間近で追ってきた。五輪を目指すアスリートは、勝負だけでなく、記録という自分との闘いも宿命づけられる。12年のロンドン大会は参加標準記録B(13秒15)を突破して代表入り。しかし、リオ大会の参加標準記録(13秒00)は当時の日本記録に相当する、文字通り高いハードルだった。

 14年の仁川アジア大会で銅メダルを獲得し、同年の冬から練習拠点を米国に移した。大きな故障もあった。周囲の期待が重荷になることもあった。リオヘのつらい道のりの中で、それでも彼女を前に向かせたのは「もう一度あの舞台へ立ちたい」という思いだったという。16年6月、日本選手権で優勝しながら参加標準を切れず、天を仰いだ。「残念ですね」。限界まで挑んだからこそ生まれる悔しさが、言葉ににじみ出ていた。

 あれから5年。現役最後と位置づけた今季は、体の状態もあり、満足なレースは一本もなかったように見えた。日本選手権は準決勝敗退。参加標準記録にも遠く及ばなかったが、ワールドランキングという新たな選考基準で、朗報は届いた。皮肉な運命に、複雑な思いもあったろう。それでも、日の丸を背負い、木村らしい笑顔で堂々と世界に挑んでほしいと願う。

 「ただ楽しいから、速く走りたいから競技をやっている。それでいいじゃないかって」。東京のゴールの先に、幸せな風が待っている。(小西晶)

#東京五輪・パラ


  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

記事一覧