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言ノ葉ノ箱
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水辺の鳥たち

2013/12/26
ヒヨドリの水浴び(撮影・東秀好)

ヒヨドリの水浴び(撮影・東秀好)

冬が来ると、北国から渡ってくる鳥が増えて、水辺もにぎやかになる。

名にし負はばいざこと問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと

  「伊勢物語」の中で在原業平が詠んだとされる歌である。ここに出てくる「都鳥」も、冬に日本に渡ってくる鳥の一つである。ただし伊勢物語に登場する「都鳥」は、現在のミヤコドリ科に分類される都鳥ではなく、ユリカモメのことだろうといわれている。都鳥は腹部をのぞいて黒いが、伊勢物語では、「都鳥」のことを「白き鳥の嘴(くちばし)と脚と赤き、しぎの大きさなる」などと記述されていて、ユリカモメが最も近いのである。

ユリカモメとカモメ

ユリカモメとカモメ

 12月のはじめに皇居のお濠(ほり)でこのユリカモメを見つけた。水面で群れをなして戯れている、ように見えたが、魚を捕っていたのだろう。少し身体が大きい者もいると思ったら、嘴の黄色いカモメがまじっていた。水の上では、種類の違う鳥でも反目しあうことなく共存しているようだ。

いづ方に向きて鳴くともゆりかもめ心一つが染まる青湖に   安永蕗子

噂だけの関係もある夕焼けてカモメは黄色い鳥になりたり  
 花山周子

 少し離れた水面にスーパーの袋のようなものが浮いていてよろしくないなあ、と思っていると、にょきりと白い管が水中より現れた。それは白鳥の首で、袋に見えたものはその身体だったのだ。すうっと水面を移動する姿は、やはり優雅でうつくしい。バレエという踊りで白鳥を表現するとは、おもしろい発想だと今更ながら感心してしまう。

外濠に白鳥一羽うかびをり皇后の古いカバンのごとく 
      小島ゆかり

 白鳥の、どこか置物めいている様子をかばんに喩(たと)えている。白くきれいなまま時間に置き去りにされたような白鳥、そして皇后自身の悲しみを表現しているのだろう。

白鳥

白鳥

 皇居のすぐそばにある日比谷公園には大きな池があり、塑像の鶴の嘴の先から絶えず水が噴き出している。その水の飛沫(ひまつ)に近づき、一瞬の水浴びを愉(たの)しむ鳥がいた。鵯(ひよどり)だ。
 鵯は年中見かける鳥だが、金属をこすったような声で鳴き、一瞬羽を閉じつつ飛ぶ、独特で勢いのある飛び方をする。

ひよどりのふたつはげしく争ひてゐしが林の些事として暮る
    藤井常世

去年今年鋭くひびく鵯のこゑにうつそみ立ちあがりたり
        小中英之

 2首とも鵯の気性の激しさを捉えつつ、空間と時間の奥深さに迫っている。目の前で噴水の飛沫に戯れる鵯は、幼児が水遊びに興じる姿に似て、無邪気だった。
                         (歌人・作家)

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