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言ノ葉ノ箱
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アイスホッケーの新チーム

2021/11/2

 「角川短歌賞」という短歌の新人賞の選考委員だったとき、候補作の中にアイスホッケーをテーマにした連作があり、大きな話題になったことがある。

東京の無限の光も照らさないアイスホッケーへの道えらぶ
                    小野田光

全身の湯気は防具のすきまから魂抜けるごと立ちのぼる
                       同

勝利後の全裸の男たち叫ぶロッカールームでさがす下の句
                       同

 連作を通して読むと、東京から北海道の製紙会社に就職してアイスホッケー部に所属し、短歌創作にも励む若者が主人公であることが分かる。この50首連作「ホッケーと和紙」は、2018年の第64回角川短歌賞で佳作になった。選考委員のほとんどが作者をプロのアイスホッケー選手と信じ、驚いていたが、作者の小野田さんは、実はアイスホッケー選手ではなかった。アイスホッケーの競技経験があり、試合の撮影や記事に関わる中で得た知識を活用して、フィクションとして描いたのである。

KOSÉ新横浜スケートセンター

KOSÉ新横浜スケートセンター

 その小野田さんから、東京近郊のスケート場でもアイスホッケーの試合が行われていると聞き、案内していただいた。神奈川県の新横浜駅から数分歩いたところにある「KOSÉ新横浜スケートセンター」である。ここをホームとする「横浜GRITS」は、横浜市を拠点とする初めてのプロアイスホッケーチームとして2019年に発足し、翌年6月に「アジアリーグアイスホッケー」に正式に加盟した新しいチーム。普段別々の場で働きつつ週末などを利用して活動を行う「デュアルキャリア」という新しい制度でのチームとしても注目されているとのこと。

アイスホッケーの試合の様子

アイスホッケーの試合の様子

 「アジアリーグアイスホッケー」は、コロナの影響で昨季より国内5チームのみでのリーグとなっている。私が観戦した10月9日は「H.C.栃木日光アイスバックス」との試合が行われた。選手は皆、全身に重そうな防具をまとっている。もともと体格のよい選手たちが、氷の上でさらに大きく見え、その迫力に圧倒される。一方で、選手一人一人のプロフィールが映像でユニークに紹介され、親近感がわく。
 氷上でぶつかりあう人の足下を勢いよく滑っていくパック(球技におけるボールに相当するもの)が、猛スピードで追いかけてきたスティックに当たり、はじけ飛ぶ。それがときおり客席の前の防護用ガラスに当たって激しい音が響き、一瞬身体がすくむ。試合中は選手の筋肉疲労が激しいため、ゴールキーパー以外は、1分ほどで素早く交代しながら進められていく。隙をついてパックがゴールに押し込められる。ペナルティーを取られ、透明な箱の中で一時待機となる選手もいる。一瞬のうちに様々なことが起こり、新鮮な刺激とともに不思議な興奮を覚えた。

選手紹介と歓声代わりのスマホ点灯

選手紹介と歓声代わりのスマホ点灯

 この日は、「横浜GRITS」が最初に鮮やかな先制点を入れ、今季初勝利をとげるかも、と思ったが、その後試合は乱れて得点が開き、4対12で「H.C.栃木日光アイスバックス」の勝利となった。
 アジアリーグのサイトでは解説付きの無料動画として試合を観(み)ることもでき、どこにいても何度でも楽しめて嬉(うれ)しい。
                 (歌人・作家)

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