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5年目の夏に
NHKのハートネットTVによる「震災を詠む2016」というイベントが、福島県郡山市にある奥羽大で行われた。この番組では、東日本震災が起きた2011年から震災に関わる「震災短歌」を毎年募集しており、今年も多数の作品が寄せられた。
仙台市在住の歌人、佐藤通雅さんとともに全作品に目を通し、選歌をした後、ゲストの生島ヒロシさん、知花くららさんと作者を交えた歌会を通じ、感想を述べ合った。この歌会の模様は、6月15日と16日の午後8時からEテレで放送される予定である。
実は、2013年に仙台市の東北大で行われた時にも私は参加したのだが、そのときは、土地にも人の心にも災害の傷が生々しく残っており、痛切な歌に涙する場面も多かった。今回の作品には、辛(つら)い中にも希望を感じさせてくれる内容もあり、5年という歳月を体感させてくれた。
しかし、あのときから時が止まったままの場所もある。
満開の中心部には立ち入れずゲートの外の六度目の春
渡辺徳仁
樹齢100年のソメイヨシノが美しい花のトンネルをつくることで知られる、福島県富岡町の夜(よ)の森の桜並木のことを詠んだ歌。福島第1原子力発電所に近く、全長2・2キロの桜並木のうち、約1・9キロは放射線量が高い「帰還困難区域」に当たり、ゲートに遮られて立ち入りは制限されている。
帰ることの許されない街に、春を忘れず咲く桜。桜が美しければ美しいほど、ふるさとを奪われたままであることの無念が伝わってくる。
元旦に焼きハゼ雑煮にすまし顔箸つけられずしばし合掌す
阿部澄江
良き人もやさしき人も波は呑みわたしのやうな者が残れり
尾形八重子
亡くなった人を想(おも)って正月の郷土料理を食べることをためらい、「わたしのやうな者」と生き残った自分を卑下する。このような、残された人の心の底に残る罪悪感が痛ましい。今年の1月に長野県で起きたスキーバスの事故で、隣に座っていた友達が亡くなったという若者が、「自分だけが助かってしまって」とつぶやいて声をつまらせたことを思い出した。自分が今、生きていることを悔やまねばならないことなど、ないのである。そのような心に、そっと寄り添える言葉を模索し続けたいと思う。
「もしもし」と語りかけたら「はいはい」と返事したがに風の電話は
後藤善之
「風の電話」は、岩手県大槌町の海が見える丘の上に置かれた電話ボックスだそうだ。電話回線は繋(つな)がっていないが、震災で亡くなった人と話をしたいと願う人がいつしか訪ねてくるようになったという。受話器を握っても、実際に聞こえてくるのは風の音ばかりだが、心には、遠い世界にいる人の声が確かに届くのだろう。
(歌人・作家)
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