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つつじの功労
この春、東京の仕事場を、文京区の千駄木という街に移転した。このあたりは「谷根千」と呼ばれる。谷中と根津、そして千駄木の地名から頭漢字を一つずつ取ってつけられた名前である。「谷根千(地域雑誌 谷中・根津・千駄木)」という名前のタウン誌によって徐々に全国的に知られるようになり、「谷中銀座」と呼ばれる商店街などは、外国人も含めた観光客で毎日にぎわっている。
根津にある根津神社で、つつじ祭りが開催されていたので、歩いて訪ねてみた。神社の小高い丘に、こんもりと丸く剪定(せんてい)されたつつじが、赤やピンク、白などの鮮やかかつあたたかな色を放ち、夢の世界を見ているよう。
やわらかな花びらをラッパのように伏せた形のつつじは、春の日差しが強くなるころ咲くこともあって、かなり派手な印象がある。根津神社のつつじは、そんな華麗なつつじが、小高い丘一面に色とりどりに植栽されていて、壮観である。週末ということもあって、たくさんの人で賑(にぎ)わっていた。
根津神社は、細い参道に居並ぶたくさんの赤い鳥居が特徴なのだが、その朱色と競いあうように強いピンクの花が咲き誇る。鳥居の中はさまざまな人種の老若男女がゆっくりとくぐり抜けている。丘の上ではカラフルな日傘をさしている人がいる。この世の色のすべてが今日ここに集っているような酩酊(めいてい)感があった。
ぐわぐわとつつじひらけり陽のもとに押し出されゆくくれないの舌
鈴木英子
確かにつつじの花びらは舌に似ている。白日のもとに晒(さら)されて、何か言いたくて仕方がない、といえばそんな気もしてくる。花は、言葉を持たない代わりに、形と色で世界に何か語りかけようとしているのではないだろうか。
看板の下でつつじが咲いている つつじはわたしが知っている花
永井 祐
なんらかの看板の下に咲いているつつじを詠んでいる。根津神社のつつじのように多くの人に注目してもらえるわけでもなく、なんとなく植えられて、花が咲いていても誰も立ち止まることのないような植え込みのつつじなのだろう。
こんなふうにつつじは一般的に、道路沿いの空気の悪そうな場所だったり、公園の片隅だったり、家庭の庭先だったりと、町の中にカジュアルに咲いているイメージがある。条件が少々悪くても元気でいられる、たくましい花なのかもしれない。
この歌では、そんな日常的に目にするつつじをみて「わたしが知っている花」であることを再認識している。「わたし」は知っている花の名前が少ないのだろう。それでも、これはつつじだと分かるぞ、とほんのりうれしい気持ちになったのだ。
つつじには功労賞をあげようと二人で決めたはるかなる午後
北川草子
春から夏に向かう季節を、鮮やかに演出するつつじ。環境が変わる人も多く、疲れが出やすい時期だが、人の憂いを払拭(ふっしょく)してくれるような力強さがつつじにはある。街をしずかに元気づけてくれる花に、個人的な功労賞を与える。なんて、すてきな。
(歌人・作家)
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