運動部デスク日誌

「全力少年」

2019/3/17

 「全力で少年だった」―。登場曲に使用する、スキマスイッチの「全力少年」がこれほど似合う40代もいないだろう。広島東洋カープの新井貴浩さんが20年のプロ野球人生に終止符を打ち、16日にマツダスタジアムで引退セレモニーが開かれた。

 新井さんらしく、笑顔が絶えなかった。「恩師」の山本浩二さんや黒田博樹さんのサプライズの登場にはちゃめっ気たっぷりに笑い、「弟」と慕う後輩たちに囲まれると、はしゃぐように表情を崩した。スピーチで感極まったときも笑顔で隠した。

 新井さんといえば、泥だらけになってボールを追う姿が思い浮かぶ。入団1年目、キャンプや練習では常に真っ黒になりながら容赦ないノックの雨を受け続けた。2軍戦終了後、「ストライクを見逃した」からと、本塁ベース上で正座して「反省」する光景も目にした。阪神から復帰した2015年には、ベテランの域に達していながら若手とともに連日汗を流し、定位置を勝ち取った。

 通算2203安打はまぎれもなく、レジェンドの域だ。それでも少年のように走り、一喜一憂し、野球を楽しむ新井さんが、みんな大好きだった。手を抜かず、常に全力で。われわれ中年世代だけでなく、多くの人が教わったことだろう。(下手義樹)

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