運動部デスク日誌

2020/7/11

 昼前、自宅の玄関のドアを開けた時のことだ。「ざー」という音と強烈な雨の匂いに体が包まれた。「これだけ降れば、今夜のカープは中止だな」とほっとした気持ちで出社すると、「今夜の試合はナゴヤドームだから中止はないですよ」との声。「そうか屋根付きか」。やや拍子抜けした。
 なぜ、強雨だとほっとするのか。これは、プロ野球記者の習性といっていい。現場の記者にとっての最大の恐怖は、雨天でプレーボールをかけ、中断することである。試合終了時間が読めなくなり、締め切り時間との壮絶な戦いに挑まなくてはならなくなるからだ。中止なら、そのリスクは消え、早く仕事を終えることができる。それはデスクも同じである。
 ただ、梅雨時期は少し事情が変わる。雨天中止が続くので、紙面を埋めるための「雨傘原稿」をつくるのが大変になるからだ。思い出すのは入社2年目の時のこと。甲子園での阪神3連戦が梅雨の雨で全て中止となった。3戦目。「メインはブラウンでいけ」と指示された。現役時代のブラウンは感情の起伏が激しく、取材の難しい選手。当時の松本通訳からは、「機嫌を損なわないよう聞いてね」と釘を刺された。
 珍しく、その日のブラウンは上機嫌。松本通訳の口もなめらか。ただ、調子に乗って、聞いたことを全部書いたのが間違いだった。原稿を出稿した後に、デスクから電話が。「ブラウンはアメリカ人だよな」「はい」「アメリカ人が『千里の道も一歩から』なんて言葉を使うと思うか」「・・・」
 雨の日の苦い思い出である。(小西晶)
 7月は全文ご覧いただけます。

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